心の戦士!~心が前向きになる言葉~

どんなときでも心を晴れやかに!→ 心の戦士いざ参上!

富の限界

桓公管仲、富有涯乎、答日、水之以涯、
其無水者也、富之以涯、其富足者也、
不能自止於足、而亡其富之涯乎

 

斉の桓公(かんこう)が家臣の管仲(かんちゅう)に「富に限界はあるのだろうか」と尋ねました。そのときの返答が下記です。

 

水の涯(かぎり)たる、その水なき者なり。

富の涯(かぎり)たる、その富すでに足れるものなり。

人は自ら足るに止まること能わずして亡ぶ。

それ富の涯(かぎり)か。

 

by 韓非(「韓非子 税林」)

 

<訳>
水の限界はその水のなくなるところ、富の限界は人がそれに満足したところです。しかし人は満足できずに富をむさぼり続け、ついには身を滅ぼします。それが富の限界でしょうか。

 

韓非は中国の戦国時代の人物で、彼の思想をまとめた「韓非子」は秦の始皇帝諸葛孔明など、多くの中国の偉人から高く評価されます。韓非は韓の公子でしたが秦の李斯(りし)の讒言(ざんげん)で獄中に入れられ、最後は李斯(りし)に促される形で自ら命を絶ちました。

 

引用文献

f:id:leonet0702:20191102145110j:plain

 

さて、富の限界について。

月収20万円でも、80万円でも、300万円でも、1000万円でも、その範囲内で幸せを形成できる人とできない人がいます。この違いは何なのでしょうか。額面の多寡は関係なく、月収20万円でも幸せを感じられる人は感じられます。

 

両者の違いを生むヒントをくれるのが本多静六氏(1866年‐1952年)。本多静六氏は、日本の林学博士、造園家、株式投資家で日比谷公園明治神宮を設計した人物。日本の「公園の父」とも言われます。

 

そんな本多氏は次のように言われます。

『人生の幸福は、現在の生活程度自体よりは むしろその生活の方向が上り坂か下り坂か、上を向くか下を向くかで決定せられるものである。つまり、人の幸福は出発点の高下によるのでなく、出発後の方向のいかんにあるのだ。


したがって、大金持ちに生まれた人は、すでに坂の頂上にいるのだから、それよりも上に向うのは容易でなく、ややもすれば下り坂になりがちだが、ごくごく貧乏に生まれた人は、現在坂の一番下におり それ以下になり下がる心配もなく、少しの努力で上になる一方だから、かえって幸福に生きる機会が多いということになる。

 

古今の大成功者がたいてい貧乏生まれであることは、貧乏生活から出発するため、努力によって幸福を感じる機会が多く、つい努力を習慣として日々新たに向上出発することになるからである』

 

健康にも触れます。


『人の健康は幸福の基礎であるのに、金持ちが健康になるには、貧乏人と同じように簡素質素な生活をしなければならないが、それが苦しいものだから、ついに怠惰になり、病身になり、人間幸福の基礎を壊しやすいということも不幸を感じる1つの理由である。

 

「富者を健康(幸福)にする唯一の方法は、不断に運動を節制とを行なって、あたかも貧乏人のごとく生活させることである」(サー・ウイリアム・テンプル)


では、名家や金持ちの子弟が幸福になるにはどうすればよいかといえば、それは最初はなるべく低い生活から始めて、欲望は自分の努力で満たすことにし、しかもその生活を自分の努力しだいで高めていくことである』

 

by 本多静六著「自分を生かす人生」三笠書房

f:id:leonet0702:20191103005601j:plain

 

 

いかがでしょうか?

安月給の人でも堂々と幸せになれることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

 

本多静六氏ももちろん 出発点は低いところから始まります。簡単に触れます。本多静六氏は1866年生まれ、11歳で父を失い、本多家の養子となり、苦学で東大農学部を卒業。その後ドイツへ留学し帰朝後は東大助教授、教授、日本初の林学博士となります。山林、土地、株などの売買で巨万の富を築くも、自身は質素な生活を続け、退官を機に匿名でほぼ全資産を教育や公共機関に寄付されました。

 

月収20万円でも支出を19万円に抑えればその月は1万円の黒字。仮に翌月は5千円の黒字、翌々月は2千円の黒字とします。すると3か月間の累積黒字額は0円から1万7千円と積み上がります。これを本多氏は上り坂(上向き)と表し、即(すなわち)幸福と言われるのです。(額面は関係なく黒字化することが大事)

 

これは非常に重要です。

なぜなら長者番付に載る超大金持ちも、上り坂(上向き)でないと幸福は感じられないことを意味するからです。だからでしょうか。ソフトバンク孫社長も金銭で幸せを感じられるわけはなく、事業でデジタル情報革命を今なお推進中、ユニクロの柳井社長も「服を変え 常識を変え 世界を変える」の実現途上です。

 

上り坂(上向き)はお金(金銭)だけに生まれません。ありとあらゆるジャンルで出発点は低ければ低いほど幸福になれる機会に恵まれます。そう考えると、あなたの今の境遇も感謝の対象に成り代わるのではないでしょうか?

 

もう一度韓非の言葉。

「水の限界はその水のなくなるところ、富の限界は人がそれに満足したところです。しかし人は満足できずに富をむさぼり続け、ついには身を滅ぼします。それが富の限界でしょうか」

 

満足の線は自分で引くもの(月収20万円を18万円で引げば2万円の黒字)。月収20万円で引けない人が100万円で引けますか? おそらく引けません。大物有名人がお金に呑まれ、詐欺行為を働いた事件がありましたが、まさにそれは自身で満足の線を引いてこなかった典型的な例。月収が上がれば引けるというものではないのです。

 

そして1回の満足は次(2回目)の満足を目指させます。そうやって自己を律し満足の線を守ってきたのが本多静六氏。彼は1/4天引き貯金法といって、月収の1/4を強制的に貯金に回すことを実践し、累積黒字額を積み増しました。その途上が上り坂(上向き感)、そこに幸福は宿ると自身の体験で語られます。

 

満足の線を自分で引く、すなわち富の限界を自ら敷くことは、窮屈でしょうか? ストレスでしょうか? つまらないでしょうか?

私はそうは思いません。おそらくその逆、満足の線を自分で引かず、富の限界を自ら敷かないことは、欲のままに生きることになり、欲が欲を産み本当に身を亡ぼすことにつながります。そこでようやく富の限界を知らされる、そうなったときはもう手遅れ、そこからの逆転は不可能に近いでしょう。

 

 本多静六氏は積み増した累積黒字額を株式投資に回しさらに資産を増やしました。なぜ増やせられたと思いますか? そう、株式投資にも「二割利食い、十割益半分手放し」という満足の線(ルール化)を引いたからです。

 

富の限界は満足の線。自らの意志で満足の線を引く人は利益を手にします。その利益の享受が達成感ならびに幸福と自信をもたらし、挑戦心を育みます。挑戦は富の限界を押し上げる唯一の方法。満足の線を守ることは、あなたの幾多の挑戦を下支えします。

 

最後に一言。

富の限界は例外なくすべての人に訪れます。お金持ちの人にも超大金持ちの人にも…。

逆説ですが、満足の線を守る人が、富の限界(満足の線)を押し上げます。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。