「ローソク」の生きざま
私は基本一人で過ごすことが多いからか、座右の銘の一つに次のような言葉があります。
「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め」
これは言志四録に載っている一節。
言志四録は、江戸後期の儒者 佐藤一斎が林家の塾長となって、塾生に教えていた42歳から晩年の40年にわたって、4篇の文を書き綴ったもの。その言志四録を座右の書としていたのが明治の元勲と言われる西郷隆盛。西郷隆盛のみならず、幕末の志士に多く読まれたようで、それ以降現代においても政治家や経営者の行動指針として活用されています。
一文の内容はそのままで理解できると思いますが、一応次のような意味です。
「暗い夜道を歩く時、一張の提灯をさげて行くならば、どれだけ暗くとも心配しなくてよい。ただその一つの提灯を頼りにして進むだけでよい」
私が孤独に感じたとき、自分の努力が誰にも見られず認められないとき、嫌なことがあってもそのはけ口がなく悶々と頭を抱えるだけのとき・・、いつも私を助け、救ってくれる言葉。自分だけの灯りを頼みに未来を信じればいい、そう言って聞かせてくれるようで、心が温まります。
さてこの言葉の「一燈」ですが、何が一燈なのか? 何を一燈とするのか?
そのヒントをくれるのが、ダイエー創業者中内功さんの次の言葉。
「人間とは本来弱いものだ。だが、信念とか使命感で行動するときはなぜか果てしなく強くなる」
中内さんにとっては信念や使命感が一燈に成り代わるもの と言えます。
ではどうしたら信念や使命感をもてるのか?
京セラ創業者の稲盛和夫さんの有名な言葉に「動機善なりや、私心なかりしか」があります。
"その動機は世のため人のため、社会のために善なることか? 自分勝手な私利私欲から出てきたものでないか?" こういったことを自問自答し、"否" という答えが心底から返るなら、それは結果を問うまでもなく必ず成功する夢だと言うのです。
まとめましょう。
あなたが不遇に襲われ、孤独を感じたとき、そんなときにはただただ一燈を掲げ、その一燈を頼みに迷わず信じ前に進めばいい。その一燈は人や社会のため、人の笑顔や喜びに通ずるもので、あなたの好きや強み、こだわりから生まれるもの(=あなたにとっての信念・使命感)。それがあれば夜道だろうとトンネルの中だろうと、絶体絶命 四面楚歌だろうと、神がかったようにあなたの心に強さが宿る。だから大丈夫!
先達はそう教えてくれます。
ところでこんな言葉をご存じでしょうか?
「ローソクは自分自身で輝くから、どんな大きなダイヤよりも美しい」
by マイケル・ファラデー(イギリスの物理学者・化学者)
「一燈を提げて暗夜を行く。暗夜を憂うること勿れ。只だ一燈を頼め」
自分で自分を燈(とも)す、その姿はまさにローソクのようです。