「許せるようになる」コツ
現代はストレス社会と言われて久しい。
「ストレスマネジメント」という言葉があるくらい、ストレス予防やストレス解消策が人や企業に求められている。医学的観点からも「ストレスは万病のもと」と言われ、それに「否」と答える医者はおそらくいないでしょう。
さて、ひとえにストレスと言っても様々な要因があるが、その中でも "あの人は許せない" "~な自分が許せない" といった "許せない" という感情はその他のストレスと比べてひと際大きくその人の心を蝕むものと私は思いますが、あなたはどう思いますか?
本日のテーマはこの "許せない" という感情について、少しでも許せるようになるコツをお伝えできればと思います。
ヒントをくださったのは1998年11月に逝去された映画評論家の淀川長治さんの以下の言葉。
「まちがいだらけなのが人間」
そして
「人間ほどいとおしいものはない」と続きます。
この世に100%はないように、人は誰しも完璧な人はいません。つまりミスや失敗、怠惰や悪徳そして「人の不幸は蜜の味」といった噂や陰口、これらはすべて人間にとって付きものなのです。
にもかかわらず、仕事や夫婦間などでは、その本質をすっかり忘れ、自分の尺度でモノをいい、自分の尺度でストレスを溜めます。すなわち瞬時に "許す" という感情が伴えない。
淀川さんの記事が掲載された書籍PHP編集部編「いい言葉が60歳からのいい人生をつくる」から淀川さんのコメントを下記に一部抜粋します。
「"人間嫌い" という言葉が昔はやったことがあった。そのまちがいはどこからきているかを知る必要がある。人間をあまりにも美しいものと思いたいからである。馬鹿げたことである。人間は汚いものなのである。汚いから孤独に落ちる。汚いから苦労する。我本位のその汚さ。神様じゃないんだから仕方がない。これを知ったうえでこの人間を愛したとき "人間嫌い" は "人間いとし" に急変する」
「まちがいだらけ、それが人間。そんな人間を私はああいいなぁと惚れ惚れする。私自身がいつもまちがいだらけだからである。世の中の人がみんな神様みたいに完全無欠になればさぞつまらぬであろう。まちがいだらけが、まちがいだらけと恋をし友情を深める。面白い。これが人生。そしてそこに気づき、そこを互いに理解しようと無駄な努力をする。そこに人間は美しさを生む。無駄な努力とはひどいが、やっぱり無駄だ。いつまでたっても死ぬまで欠点だらけ。それが人間」
私の当ブログ「心の戦士!~心を前向きにさせてくれる言葉~」には、「自己を律する厳しさが、自分を誇らしげにし、前向きな心、晴れやかな心を産む」といったニュアンスの記事が多く綴ってあります。
それを読まれたあなたが自分への厳しさを醸成すればするほど、醸成できるようになればなるほど、人に厳しく当たってしまいかねないのが人情。ここがその後の人生を飛躍させられるか否かのターニングポイントです。
身近な人や大切な人に、ある程度の厳しさを持ってもらうべく、注意をすることは何も問題ありません。注意の仕方が問題。ただ感情的なそれなのか、それとも相手の人間的尊厳を認めたうえで、その後の飛躍を祈ってのそれなのか、ここが分かれ目です。
また何のいわれもないのにただ自分のことを悪く言う人、気にしていることを平気で指摘し、それだけにとどまらず周りにおもしろおかしく吹聴する人、こういう輩?も残念ながら少なからずいらっしゃいます。そういうときでも淀川さんが言われるように「人間は本来汚いもの、利己的で自分勝手で人をいじって笑いをとるのが楽しい生き物」と客観的に理解し、自分が違っても、"人は自分とは違いかつ人間" なのだから仕方がない」と割り切ることが大切です。
私も過去に身体で気にしていることを指摘され、周りにも吹聴され、ひどくストレスを抱えたことがあります。しかし現在、そのことを平然と受け入れられるようになったのは淀川さんの言われるように「人間は聖人君子ではない」ときっぱり理解し理解できたからです。そして私をなじった相手を反面教師とし、自分はそうならないように気を付け実行することを密かな私の喜びと転換させたのです。
なぜ密かな喜びなのか?
自分が悩んでいることや、コンプレックスに感じていることをわざわざ指摘してくる人がいる一方で、指摘しない人がいると、当人は後者にとても節度を感じます。節度ある人間は信用におけます。何かわからないことがあれば、なんでも聞きたくなるし、立場にもよりますが、モノも頼みたくなります。株の暴落時に値上がり株を仕込める人は大儲けできるように、みんなが悪く言う時に口をつぐめる人は、信用度が一気に上がり、その分、人や組織を動かしやすくなるのです。決して悪だくみを言っているわけではなく、自身の今後のストレスマネジメントに大いに貢献することになると申し上げたいのです。
最後に今回は淀川さんを紹介しましたが、書家・詩人の相田みつをさんも「人間だもの」で、同様、人間の不完全さをこれまでもかと詩っておられます。
自分にも、人にも、許せる人は器の大きい人です。人間的本質を理解している人です。自分中心の、自分本位の見方をしない人です。世の中にはいろいろなレベルの人がいることを知っている人です。
あなたのストレスが格段に減じることを祈念します。
少なくとも "許せない" から来るストレスはなくなりますように…。
引用・参考文献