「心のストレス引当金」
プライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務をされる傍ら、執筆業も兼務されるベストセラー作家 ムーギー・キムさんが書かれた本に「最強の働き方」(2016年7月発売)があります。とても有名な本なのであなたもご存じかもしれません。
さて、この本の中に「心のストレス引当金」という項があります。これは著者の造語になりますが、一般に使われる「貸倒引当金」をもじった形です。
「貸倒引当金」とはある銀行があるお客さんに1万円を貸したとき、20%(2000円)は返ってこないものとハナから諦めて、その期に2000円を損失計上する考え方のこと。実際に例えば2年後に80%(8000円)しか返ってこなくても、2年後の期に20%(2000円)の損失計上はしなくてよく、なぜなら2年前に損失計上をしているからです。
この考え方をストレスに用いたのが先の言葉「心のストレス引当金」です。
アドラー心理学ではすべての悩みは人間関係から生じるといいます。よって人間関係においての「心のストレス引当金」を考えてみましょう。
例えばあなたが部下に、ある業務を依頼したとします。その出来栄えや納期、依頼したときのリアクションまで、すべてにおいて2割を差っ引いておくのです。2割とは不快で否定的で想定外の結果のことです。
雀鬼会会長の桜井章一さんは、著書の多くに「期待は病」と書かれます。(雀鬼会とは麻雀を通じて人間本来の素直さや勇気を育むことを目的とした集まりのことです)
桜井さんは期待からストレスが発生すると考え、ハナから期待をしないことを勧められます。ムーギーさんの「心のストレス引当金」も同様です。10割を期待するから10割以下のケースにストレスを感じることになるわけで、最初から2割を諦めておけば、2割分だけ想定内となり、何事も落ち着いて対処できるようになります。
ムーギーさんはさらに仏教的な見地にも踏み込みます。お釈迦さまは「すべてのものは滅び、無常である」と悟ったことから、「人生はそもそも辛いものであり、苦難の中に平安を見つける教えが仏教の本質といえる」と。
確かに"やって当たり前" とか "こうであるべき" という頑なな心を持っている人は、他者とうまく付き合えません。他者には他者のベースがあり、そのベースは基本、両親から植え付けられたものが多く、それが人の数だけ存在するからです。
一番いいのは、頼んだ相手に期待をしておき、その実(内心は)、2,3割は引き当てておくことです。人は期待されればそれに反応する人も多くいるからです。
私のような会社員は、1日8時間を組織の中で生きます。毎日8時間の人生が組織の中で訪れます。それならば、組織の中でいかに幸せを感じられるかが、8時間を有意義にできるかどうかを分かちます。そこにフリーランスや自営業者の論理は通用しません。
会社から一歩外に出れば、どんな論理を持とうがけっこうです。しかし組織にいるうちは、組織の中で不要なストレスを生まないこと・溜めないことが、長い人生を戦い抜くうえで大切な土台をつくります。
今 自分はどこにいるのか?
周りに惑わされず、常に現実を直視し、かつ俯瞰もしながら、「心のストレス引当金」を上手に使い、自分の健康や時間を守り抜くことが大切に思います。
「心のストレス引当金」
世知辛い世の中ですが、ストレスを生まない考え方に、幸せは舞い込むのではないでしょうか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。