集中力は時間より「回数」2
前回の記事「集中力は時間より回数」のつづきです。
2012年8月に出版された本に岡田真波さん著『東大生だけが知っている「やる気スイッチ」の魔法』があります。
この本は著者の岡田さんが、東大入学後に東大合格者の「心」について取材しまとめられたもので、浪人時代に心理学に興味をもち、東大合格者と不合格者の違いに関心を持ったことに端を発するとのことです。
内容は1章から9章に分類分けがされており、例えば1章「習慣を変える」、2章「小さな行動を起こす」などです。その章ごとに、6人ほどの東大生がそれぞれの勉強法や考え方をご紹介。すべての章で計50人の東大生が紹介されます。
今回紹介させていただくのは3章「工夫のスイッチを見つける」の中のお一人。東大生の名前はすべて仮名となっているため、ここでもそのまま掲載します。
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「アルフォートをご褒美にする」
文化1類2年 山本淳一さん
<集中力をくれる魔法のビスケット>
僕が東大に合格できたのは、アルフォートのおかげです。
アルフォートは、ブルボンから発売されているチョコレートビスケットです。これを勉強中に食べるようにしてから、集中力が格段にアップして、毎日決められたノルマを計画どおりにこなせるようになったんです。
ただビスケットをたべているだけで集中できるなんて、そんなおいしい話があるわけないと思いますよね。でも、「アルフォート勉強法」を実践すれば、やる気と集中力が続いて、誰でも計画倒れをしない体質になれるんです。
アルフォート勉強法のやり方は簡単です。問題を1問解いたり、英単語を1個覚えたりするたびに、自分へのご褒美として好きなお菓子を1個食べるんです。ポイントは、ちょっとでも勉強が進んだら、すぐ自分にご褒美をあげることです。
問題集を一気に10ページやって、お菓子を一気に10個食べるよりも、問題が1問解けるたびにお菓子を1個ずつ食べるほうが、集中力を途切れさせずに頑張れます。
「1問解いたらお菓子1個、もう1問解いたらもう1個・・」と、ニンジンで馬を釣るように、お菓子で自分を釣るんです。お菓子に釣られて、1問、また1問と頑張っているうちに、いつの間にか問題集が何十ページも終わっているということもよくあります。一つ課題をクリアするたびに、一つ好きなお菓子が食べられるので、こまめにやる気が刺激されて、集中力が長続きするんです。
短いスパンでストレスも発散されるので、長時間作業していても疲れません。
(同書より抜粋)
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いかがでしょうか。
前回の青木さんの言い分とスタンスが似ていないでしょうか。
前回私は、こまめに休憩をとるうえで、「あらかじめ何をしたら休憩をするかを決めること」、そして「休憩すらも時間や内容を決めること」、この2つのセットをもって重要である旨 申し上げました。
山本さんの勉強法も、その方法に準じていることがわかります。「1問解いたら、アルフォート1個」という具合に、アルフォートを2個も5個も食べません。ちゃんと1個と決めていて、まったく気まぐれではありません。
山本さんはこの1個のアルフォートで自分を釣ることを「超近接目標」と呼び、心理学者のバンデューラ氏が用いた言葉をアレンジしています。
バンデューラ氏は遠大な目標を「遠隔目標」、達成しやすい目標を「近接目標」とし、遠隔目標だけで人間は努力を継続できるものではないとし、この両者が大事であることを説かれたとされます。
山本さんはその説にさらに踏み込み、「近接目標」の達成すらも「超近接目標」が必要になると考え、自分をアルフォートで釣っていったというわけです。
山本さんは最後にこう締めくくります。
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「東大を目指す」と決めたときは、目標が大きすぎて、どう頑張ればいいのかわからなくなってしまうことがありました。不安な気持ちに追い立てられて無理な近接目標を立てて、計画倒れになることもよくありました。でも、アルフォートで自分を釣ることで、少しずつ確実に前に進むことができたんです。
(同書より抜粋)
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人間のウィルパワー(意志力)は有限とされますし、そもそも人間は易きに流れる生きものです。それらをきちんと理解したうえで、対策を兼ねた実行計画が結局は自分をモチベートでき、集中力を生ませられるのだと思います。
その対策を兼ねた実行計画は、遠隔目標と近接目標はもちろん、それに加え「超近接目標」をきちんと据えること。「超近接目標」が自分を褒める儀式を増やし、自分を好きでいさせます。
自分を好きでいられれば、目の前の課題は下位に位置付けられます。主体的に取り組むとはそういうことで、いかに自分(とご褒美の関係)を上位にもってくるかが、モチベーションおよび集中力を生む鍵を握ります。
青木さんのサウナの話しでは、サウナだけではただの拷問です。しかしご褒美に当たる「水風呂」があるから、サウナを下位に位置させ、サウナに集中力を発揮できるのです。しかしその集中力にも限度があり、個人差はあれど約10分程度が頃合いということ。
感情を感情のままに任せず、自分の意志や計画で「感情」をコントロールできるのもまた人間の素晴らしいところ。万物の霊長と言われる所以の一つでしょう。
「集中力は時間より回数」
回数を担うのは「超近接目標」。
あなたはいかがお感じになりますか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。