心の戦士!~心が前向きになる言葉~

どんなときでも心を晴れやかに!→ 心の戦士いざ参上!

「兵糧意識」とは? 1

私が「兵糧意識」という言葉に出会ったのは20代の中ごろだったと思います。弘兼憲史さん(漫画家)の著書「強い自分は自分でつくる」という本を読んだときです。その中に「蓄えを軽んじるな」という項があり、そこに「兵糧意識」という言葉が出てきました。

 

弘兼さんの代表作といえば「課長 島耕作」。今の10代の方はご存じないかもしれませんが、20代以降の方なら名前くらいは聞いたことがあると思います。その「島耕作シリーズ」は「課長→部長→取締役→社長」と進み、現在は「相談役 島耕作」で連載中。世のおじさま方の教科書になっているのか、"サラリーマンもの"でここまで長続きする漫画も珍しいと思います。少なくとも私は「島耕作」しか知りません。

 

そんな弘兼さんですが、私は彼の作品(漫画)というよりエッセイが好きでして、これまで出た本はすべて読んでいます。「強い自分は自分がつくる」は、その中の序盤の頃に出された本です。以下に「兵糧意識」がわかりやすく載った箇所を抜粋します。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

新聞の片隅にときどき大金を残したまま死んでいた老人の記事が載る。アパートに一人で住み、切り詰めて暮らしながらコツコツと貯める。一千万単位のカネが使われることもなく残されている。そういう記事を見ると、20代のサラリーマンのほとんどは"バカだなぁ"と笑う。生きてるうちが花なんだから、金なんか使わないと損じゃないかという。死ぬまで持っているぐらいなら、オレにくれればいいのにと冗談めかして言い合う。

 

ところがぼくの友人は、あれは兵糧意識なんだと言った。いつ使うかわからないし、もしかすると使わないかもしれない。それでもあれば安心するのが兵糧で、まるまる残して死んだとしても少しも後悔なんかしてないはずだと言った。

(同書より抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

f:id:leonet0702:20200521145801j:plain

 いかがでしょうか? 「兵糧意識」がなんたるかはおわかりいただけたのではないでしょうか。しかしもう少し弘兼さんの考えを見ていきます。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

一人で生きる心構えを持つなら兵糧意識は大切だと思う。何に使うかはっきりした目的がなくても、生活の中に少しずつ「蓄え」を増やしていくのは大切な心構えだと思う。それは別にカネでなくてもいい。無駄な出費を切り詰めて、本当に欲しい本だけを少しずつそろえていくのも兵糧意識だ。車はボロで我慢しても、好きなカメラだけはコツコツと逸品を揃えていくのも兵糧意識だ。料理人を目指す若者が、生活を切り詰めながら道具だけは納得のいくものを揃えていくのも兵糧意識だろう。

 

大事なのは将来を見据えていまを切り詰める心だ。カネであれモノであれ、いざというとき自分を支えてくれるものを蓄えていくことだ。それがケチに映っても気にすることはない。

(同書より抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

弘兼さんはサラリーマン時代に漫画家を目指すことを明確に決めていたわけではありませんでした。ただうっすらと"そういう道もある"くらいしか思っておらず、しかしそのころからコツコツとお金を貯めていました。それが退職時には100万円になっていたとのこと。そういう実体験をお持ちですが、そのときのことをこう振り返ります。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ただしぼくはサラリーマンを嫌ったわけではない。希望する職場に配属されたのだからなんの不満もなかった。辞めない道もあったということだ。それでも兵糧は必要だと思っていた。なぜならいつ、新しい世界が開けてくるかわからない。漫画家であれ料理人であれ、いつどんなきっかけやチャンスが訪れるかわからない。そのとき、蓄えがないというだけの理由で足踏みしたり、他人に借りを作るのではあまりに情けない。

 

兵糧は一人で生きる勇気を支えてくれる大切な蓄えなのだ。それを使う機会が実際に訪れるかどうか、そんなことはどうでもいい。無駄な出費を切り詰めながら、生活の中に少しずつ蓄えを残す。この気持ちがそのまま一人で生きる勇気を育ててくれるとおもってほしい。他人をケチ呼ばわりする人間は、所詮、一人では生きることなどできない。

(同書より抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

弘兼さんのエッセイに共通する特徴は、とても文章がわかりやすいことです。だいぶ抜粋しましたので、私の捕捉も不要でしょう。

 

ただ1点、弘兼さんが言われる「一人」は「独身」という意味ではなく「一人の人間」という意味です。独立やフリーランスを勧める本ではないため、「フリーランス」や「独立」という意味でもなく、やはり「一人の人間」という意味に思います。

 

お金にしてもモノにしても、人それぞれに考え方がありますから"正しい、正しくない"の論調ではなく"生き方"の論調です。私が今回「兵糧意識」を取り上げたのは、前回の記事「お金の価値と人生の本質」で「感情」に迫ったため、兵糧意識も結局は"安心感"や"勇気"といった「感情」に落ち着く話と思ったからです。

 

つまりは「兵糧意識」もまたある種の「感情」をつくっていて、その「感情」を欲する人と欲しない人がいる、それだけの違いです。そしてあなたはその「感情」を欲しますか?という問いで、欲するなら、ときに"ケチ"と言われようが"細かい"と言われようが、自分を貫き、つくられた「感情」に満足と納得を覚えるべきです。

 

私は「兵糧意識」に賛同します。そして日々の「兵糧意識」で感情("安心感""勇気”)を買えていることに満足と納得を覚えます。今回のコロナショックは改めて「兵糧意識」の大切さを私たちに突き付けた出来事のように思います。

 

あなたはいかがお感じになりますか?

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

f:id:leonet0702:20200521150328j:plain

 

 

引用・参考文献

弘兼憲史著「強い自分は自分でつくる」