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行動経済学「双曲割引」

行動経済学「双曲割引(そうきょくわりびき)」と呼ばれる用語があります。あなたはお耳にしたことはありますか?

 

「双曲割引」はテンプル大学の心理学者、ジョージ・エインズリー教授が唱えた理論で、人間の「遠い将来は待つことができるが、近い将来は待つことができない」という心理を表したものです。

 

どういうことでしょう?

 

遠い将来を「3年後」とし、近い将来を「今日」とします。あなたは問1と問2で、それぞれAとBのどちらを選びますか?

 

問1

A:3年後に10万円をもらえる

B:3年と1か月後に11万円をもらえる

 

問2

A:今日に10万円をもらえる

B:今日から1か月後に11万円をもらえる

 

大方の回答では、問1は「B」を、問2は「A」を選ぶそうです。あなたはどちらでしたでしょか?

 

問1は3年後の話しです。もう3年後という段階で、イメージが薄いのです。イメージは言い換えれば臨場感です。臨場感に欠けるため、正直ピンときません。それゆえ、問1ではAもBも臨場感の薄いもの同士の比較となり、それだったら少しでも額面の多いBにしておこうか…、そんな感じです。つまりはAとBの臨場感の差が小さく、それをBのAに対する割引率が小さい、といいます。割引率は臨場感の差といった感じです。

 

それに対し、問2のAはまさに今日現在の話し。とたんに臨場感を感じます。Aに臨場感を感じた分だけ、B(1か月後)の臨場感は相対的に薄れます。この状態をBのAに対する割引率が大きい、と言い、割引率は臨場感の差という感じです。

 

どちらの問いもAとBの間隔差は「1ヵ月」です。しかしその1ヵ月をどこに持ってくるかで割引率が変わってしまうことを「双曲割引」といいます。

 

「遠い将来は待つことができるが、近い将来は待つことができない」

 

おもしろい現象です。遠い将来なら合理的な選択をする人も、近い将来となると合理的に考えられず、非合理な行動に出てしまう、これが「双曲割引」の罠と言われるところです。

 

しかしこの「双曲割引」は無論、程度に個人差はあります。しかし多かれ少なかれ、人間にはこのような特性があることを踏まえ、割引率が高い人ほど客観的に対策を練り、双曲割引の罠に陥らないよう、気をつけたいところです。

 

最後に捕捉です。

今年も早いもので、あと2か月もすれば2021年です。よく年始に「1年の計」を立てる人がいますが、それも「双曲割引」の罠が網をかけます。どういうことかというと、1年というとほとんどの人にとって「遠い将来」です。それゆえ、臨場感に欠け、圧倒的な臨場感を醸し出す今日の誘惑に負けてしまうのです。今日の臨場感が強ければ強いほど、「1年の計」の臨場感は割り引かれ、気付いたら「1年の計」すら忘れるかもしれません。

 

「今日」の目の前に誘惑がなければ、臨場感は薄いものの、「1年の計」に、"なんだかやれそう" と意気込めますが、いつなんどき誘惑が襲ってくるかもわかりません。

 

ということは、「1年の計」に限らず、何かの目標を立てるときは、常にその目標を割り引くだけの誘惑が襲ってきたときの対策を立てることが、まずもって肝要ということになります。

 

誘惑そのものを襲わせないように環境配備する、それも一つでしょう。しかし誘惑はあらゆる角度から襲ってきます。つまりいくら環境配備しても誘惑を0(ゼロ)にはできません。ということは、誘惑を襲わせない環境づくりと、襲ってきたときの対策、この両輪の走行が目標達成を安全なものとしてくれます。

 

次回もこのテーマでお話しします。

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

※本日のテーマである「双曲割引」について、私なりにお伝えしやすくするため「臨場感」という言葉を使いましたが、実際は違います。実際は「価値」という言葉で説明がなされます。例えば問1(遠い将来)はAもBも価値の大きさに対しての割引率が微差なのに対し、問2(近い将来)は、AとBの価値の大きさに対しての割引率が大きく異なります(Bの方が割引率が大きくなります)。ご興味ある方は下の記事をご覧ください。とてもわかりやすく解説されています。

 

引用・参考記事

www.nissay.co.jp