「アンガーマネジメント」
先日に私は佐藤優さん著「メンタルの教科書」を読みました。格差社会が訪れようとする現代に、いかに しなやかに世を渡るか等、さまざまなことが簡潔に書かれます。
その中の一項に「アンガーマネジメント」に触れる箇所があります。私はそれまであまり「アンガーマネジメント」に関心をもたなかったのですが、その内容は少し斬新で、あなたにも参考になればと思い、紹介します。
これまでの「アンガーマネジメント」の一つに「怒りは抑圧されることで増す」という理論がありました。これは かの有名なフロイト心理学に基づくもので、その逆を突けば対処策となるとして「怒りのエネルギーは発散されることで、怒りが鎮(しず)まる」とされました。
しかしあるときにそのフロイト理論が誤りであることが判明。それを裏付ける実験は種々あるみたいですが、その中で有名な実験が米国の次の実験です。
学生たちに作文を書かせ、学生仲間がそれをひどくけなします。その後学生たちを2つのグループに分けます。
1つはけなした学生の写真を見ながらサンドバックを相手と思い、思いっきり叩く。もう1つは2分間別の部屋で静かに座っている。
フロイト理論が正しければ、サンドバックを叩いた前者の方が、ストレスが発散できているはず。しかし結果は逆でした。
サンドバックを叩いたほうは、ますます興奮し怒りが増長。静かに部屋に座ったグループは、叩く方に比べはるかに気持ちが治まりました。
この実験であきらかになったことは?
それは怒りだけでなく「人間は行動によって感情を作り出す」ということ。悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しくなる。面白いから笑うのではなく、笑うから面白くなる。
佐藤優さんは、その項を次のように締めくくります。
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一見信じがたい理論ですが、その後の心理学のさまざまな研究と実験によって、そのことが証明されているのです。つまり、怒りに任せた行動は、怒りを増幅させるのです。
イライイラしているときほど、静かに落ち着いた行動を取る。瞑想したり手を合わせて祈るというのが効果がある。ゆっくりとした音楽を聴いたり、美しい景色や絵画などを鑑賞するのもよいでしょう。
立ち振る舞いもゆっくりと穏やかにする。できれば笑顔を作る。口角を上げるだけでも、感情の動きが変わることが実験で明らかにされています。
怒りをコントロールすることが、心を整え、強くする一つの方法だと考えます。
(同書より抜粋)
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通常怒りを感じるときは自律神経の「交感神経」が優位になるため「副交感神経」を優位にすることが求められ、逆に活発に動かないといけないアクティブモード時は「交感神経」を優位にすることが求められます。
つまり自律神経系統からみても、フロイト理論は完全に誤りで、大事なことは、どうしたら自律神経をコントロールできるか?ということ。
それは佐藤さんがおっしゃるように「環境」から入るしかありません。私の言う「環境」はかなり広義の意味で使っています。
一番手軽で有効なのが「呼吸」です。興奮したいときは呼吸を浅く何度も吐けば、交感神経は優位になります。逆に深呼吸や深い腹式呼吸をすれば、副交感神経が優位になります。
視覚から入るなら、部屋を暗くしたり、目隠しをすれば、副交感神経は優位になります。逆に部屋を明るくしたり、ブルーライトを浴びれば交感神経は優位になります。
聴覚から入るなら、佐藤さんが言われるように、ゆっくりめの音楽を聴けば副交感神経が優位になり、アップテンポの曲を聴けば交感神経が優位になります。
嗅覚から入るなら、香水やアロマなどが手軽です。アロマで言えば、ローズマリーやパバーミントは気分をシャキッとさせ、ラベンダーやジャスミンは気持ちを和らげる効果があると言われます。
心を心に任せず、感情を感情に任せず、五感への働きかけで(自律神経を通して)それらをコントロールすることが「感情マネジメント」。感情マネジメントの一つが「アンガーマネジメント」。そしてマネジメントを担うのが「環境※」です。
※音楽もアロマも動作も姿勢も、五感に働きかけるすべてを「環境」と位置付けます。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。