ご褒美の設定「消費ゴール」
世間一般的に、先延ばしは良くないことだと扱われます。私もそのように思います。しかし戦略的に、意図的にそれを行うことはときに例外として勧められます。それが「消費ゴール」です。
「消費ゴール」?
初めて耳にされた方も多いと思います。私もつい最近知りました。「消費ゴール」というのは、一般で扱われる"喜び事"を心理学用語に置き替えた言葉です。"喜び事"というのは、ここでは「欲しい物の購入」や「イベントの参加」などを思い浮かべてください。
例えば学生の頃の遠足や修学旅行など。私は当日が本当に待ち遠しかったですが、あなたはいかがでしたでしょうか?
小学生の遠足で言えば、その当日までは友達とおやつを買いに行き、好きな女の子を想い、ときに話題に出したりする、そんなドキドキハラハラは、当日よりも前日までの方が強かったと思います。
さて、心理学の話です。
オランダ・ブレダ応用科大学で行われた実験では、次の2択が調査されました。
A:旅行に行く前
B:旅行に行ったあと
このAとBでどのくらいの満足度が持続したのかを調べました。どちらの方が持続期間が長かったか? 結果は「A」。旅行に行く前のほうが満足感が強かったのです。
この実験では旅行が終わった後の満足度も調べられ、それは最長で「2週間」。最長のため、人によっては0日や10日間だったりしますが、この最長の「2週間」の持続を感じられた人は、当日の喜びが"最高"だった人と考えられます。私たちの体験を振り返っても、だいたいは当日か翌日限りで終わると思います。しかし本当に楽しかった思い出は何度も反芻したくなり、それが今回の旅行の実験では、「2週間」だったということです。
それでは旅行に行く前の満足度は、どれくらいの期間を指したでしょうか? それが平均で「8週間」。つまり旅行に行く前の2か月前から満足度は2か月間、平均的には持続したということです。
よく目標設定では、"高すぎても長すぎてもモチベーションになりにくい" と言われますが、まさにそれを言い得ています。
この実験結果から、私たちは何を学ぶべきでしょうか?
それは俗に"ごほうび"と言われるものを、2か月後にもっていくのです。そうすれば、2か月間は"何か"のモチベーションとなり、"ごほうび"のために"何か"を頑張れます。
そして当日、実際に"ごほうび"を手にしたとしましょう。するとそれから最長で"2週間"はそれまでのプロセスを味わえます。いわゆる「2か月間の武勇伝」に浸れるのです。
もちろん必ず「2か月間と2週間」という決まりはありません。個々で個人差はあるでしょう。もし2か月間がしんどければ、1か月間でもいいと思います。
まとめます。
自分なりの「消費ゴール」(楽しいイベント)を計画するときは、当日を2か月後に設定すればよく、そのような「消費ゴール」が多ければ多いほど、毎日が楽しくなります。遠足や旅行など、自分が楽しいと思える2か月後があれば、今日のイヤなことも、遠足や旅行を想定し、乗り越えられる効果が期待できます。
また「消費ゴール」に辿り着いた暁(あかつき)には、さらに最長で2週間の満足期間が得られるかもしれません。その満足期間は、「消費ゴール」までの(2か月間の)プロセスが行方を左右します。それを踏まえて、2か月間を過ごすというのも意義深いと感じます。
そして最後に私の体験に基づく提案です。
それはいくら2か月後に「消費ゴール」を設定すれど、やはり今日という1日を生きた「消費ゴール」もあったほうがいいということです。「消費ゴール」と聞くと大袈裟に聞こえますが、「お風呂にゆっくり浸かる時間」でも「おいしい夕食」でも、「1杯のビール」でも何でもいいのです。
私は今日1日が人生と思って生きているため、どうしても1日に対しての思い入れを持ちたくなります。しかし今日1日の思い入れと2か月後の「消費ゴール」は相容れます。どちらも持てばいいのです。例えば卑近な例で、今日1日の「消費ゴール」をチロルチョコにしたとして、2か月後の「消費ゴール」をゴディバのチョコにするといった具合です。
オセロで言えば、黒を白と白で挟めば、黒を白に返せるように、モノは使いようで、自分にとってイヤだけどやらなければならないことは、1日の「消費ゴール」と2か月後の「消費ゴール」のW効果で"気合い"を注入するのです。その"気合い"が楽しさを引き連れます。そしてそれをあらゆる対象にセットすれば、今日を生きる意義(意味)も深まると思います。
"先延ばし"の勧め「消費ゴール」
・「消費ゴール」前の2か月間
・「消費ゴール」後の2週間
あなたはいかがお感じになりますか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。