「弱いつながり」の強さ
スタンフォード大学の社会学者 マーク・グラノヴェッター氏が1973年に発表した論文に「弱いつながり」の重要性を紹介した研究があります。実験内容は次のようなものです。
リストラに遭った人に、次のA~C で、誰が転職先を紹介してくれたかの質問です。
A:頻繁に顔を合わせ、自分を良く知っている人物
B:年に1回以上は会うが、頻繁ではない人物
C:年に1回も会わない、遠い人物
あなたはA~Cで、どれが一番多いと思いますか?
結果は次です。
A:16,7%
B:55,5%
C:27,8%
なんとBが一番多いという結果でした。
このような結果から、実は「強いつながり」より「弱いつながり」の方が"いざ"という時には役に立つ、という帰結で当時から最近まで話題になりました。あなたもご存じかもしれません。
しかしこの論文は言っても1973年に発表されたもの。もう50年も昔の話です。よって現代社会にそれが通ずるかを疑問視する声もありますが、それを加味しても無視できない結果だと私は思います。
ところでなぜこのような結果(Bが55,5%)になったのでしょうか?
脳科学者の茂木健一郎さんは著書「続ける脳」で次のように言われます。
「頻繁に会う人物は趣味が似ていたり、持っている情報が似通ったりして、紹介される仕事もすでに知っていることが多いものです。一方、いつも会わない人は、考えてもみなかった情報をもたらしてくれる可能性が高い。だからこそ、「弱いつながり」の人物はとても大事なのです。異なる考え方を持つ人を敬遠しがちな人もいますが、困ったときこそ弱いつながりが力になります」
「類は友を呼ぶ」と昔から言われますが、"いざ"となったときはその「類(るい)」では対処できないこともあり、だから「類(るい)」以外の「弱いつながり」を大事にすることが肝要である、そういうことでしょう。
もっと簡単に言えば、排他的(排他主義)を改め、強弱併せ呑む器量(度量)を人間性として備える大切さが示されます。
また別の視点で「年に頻繁に会わなくても、心は繋がっている」という見方もできます。物理的に頻繁に会えないこともあるでしょうし、頻繁に会っているからといって、"いざ"という時の信頼度が比例されるわけでもありません。
本記事で申し上げたいことは、グラノヴェッター氏の調査を踏まえ、強いつながりも弱いつながりも、両方を大切に扱うことで、人生をいろいろな意味で楽しめるのではないか?という提案です。下心からではなく、強弱(のつながり)そのものを楽しむ姿勢がまずもって先決にあるように思います。
あなたはいかがお感じになりますか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。