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教育に「読書」が必要な理由

前回の記事「読書時間と成績の関係」はいかがでしたでしょうか? 

 

勉強時間が同じ学生がいて、読書時間が1日最大2時間までなら、成績は読書時間が長い方が高いという内容でした。また勉強時間が異なっていても、読書時間が1日最大2時間までなら、成績は読書時間が長い方が高いということも明らかにされました。

 

しかしそれらはあくまで可能性止まり。確実や絶対ではありません。大規模なアンケートを実施した結果とはいえ、個別には例外は多々あるため、ざっくりと傾向としてご理解いただければと思います。

 

本日は読書つながりで、「なぜ教育に読書が必要か?」というテーマをお届けします。教えていただけるのは株式会社 BOLBOP 代表の酒井譲さんです。

 

まずは酒井さんのプロフィールですが、一般公開されている内容は以下の通りです。

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1972年、東京生まれ。慶應義塾大学理工学部卒。商社にて新事業開発、台湾向け精密機械の輸出営業などに従事。後、オランダの精密機械メーカーにエンジニアとして転職し、2000年にオランダに移住。特許訴訟を機に知的財産権部に異動し、米国、日本、韓国における複数拠点同時の訴訟対応をはじめ、技術マーケティングや特許ポートフォリオの管理を担当。

 

オランダの柔軟な労働環境を活用して、知的財産権部での仕事に取り組みつつも、2006年末に各種ウェブ・アプリケーションを開発するベンチャー企業を創業し、最高財務責任者(CFO)としての活動を開始。

 

南米スリナム共和国におけるアウトバウンド・コールセンターのアウトソース、開発リソースの中国とルーマニアからの調達や、オランダ、ドイツ、スイスにてマーケティング戦略を構築。さらに人事制度の構築、採用、人材育成などを担当。

 

2008年には、母校 TIAS School for Business and Society のMBAプログラムにて臨時講義を受け持つ。2009年4月、8年8ヶ月間暮らしたオランダを離れ、フリービットに参画するために帰国。2013年、株式会社 BOLBOP の代表取締役CEOに就任。

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なんだかすごい経歴です。

 

それではさっそく本題です。

"教育になぜ「読書」が必要なのか?"

 

結論、それは活字から情報を読み取る「相続力」の開発にあります。この想像力が人間が生きていく上で非常に重要な要素となり、ビジネスシーンだけでなく、プライベートでもいたるところで求められます。

 

しかし先に結論をお伝えしても、ほとんどの方はピンとこないと思います。なぜ活字や文章なのか? 映像や動画ではダメなのか? ただの情報収集だろ?と。

 

おっしゃる通りです。YouTube真っ盛りの現代において、動画よりテキストの方が重んじられるとはあまり考えないでしょう。本記事はそこのところを明らかにします。

 

まず重要となるワードが2つあります。それが「圧縮」「解凍」。酒井さんは頭の中の情報をテキスト化することを「圧縮」、テキストからしかるべき情報を読み取る能力を「解凍」と表現します。

 

まず「圧縮」について、酒井さんの話を見てみましょう。

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 たとえば2時間の会議を終えて、その内容を議事録としてメールで関係各所に報告します。そうしたとき、まとめるのが上手な人が書くと2時間の話が見事に数行に収まったりします。それで仕事に支障がないレベルの情報が十分に伝わります。

 

その数行には含まれない情報にも、きっと重要なこともあります。しかしだからといって、関係者のみが2時間の会議に出席していてはほかの仕事が進みません。議事録には、ドキュメンタリー番組よろしくその場の状況が詳細に記述されているよりも、むしろ余計な情報が贅肉として省かれ、要点だけが抽出されているほうが、仕事の効率が上がります。

 

ここでは「その場にいて、五感を総動員して取得した情報を、数行の文章として圧縮する能力」が求められています。

 

この能力はまず、重要なことをより多く記憶しておくために必要となる能力です。動画より静止画、静止画よりもテキストのほうが情報のサイズが小さいという事実からしても、圧縮された文章は保存スペースをあまり食いません。

 

同時に上手に圧縮された情報が、コミュニケーション効率を高める鍵となることは、議事録の例から見たとおりです。

 

贅肉の削がれた重要情報を多く記憶し、効率の良いコミュニケーションをとるための引き出しが豊かな人材は、変化の激しい時代にあってもたくましく生きていけるでしょう。

(酒井穣著「21世紀の生き方」より抜粋)

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次に「解凍」です。

 

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さて、こうして他者の生み出したテキスト情報を理解するには、「他人によって文章として圧縮された情報を、動画として脳内で解凍し再生させる能力」が必要になります。これこそが、人間社会で常に強調されてきた「相続力」という言葉の真の意味だと思います。

 

同じ短い文章でまとめられたメールから多くのことを引き出せる人材と、そうでない人材がいることは、読者にも心当たりがあるでしょう。相続力に欠けていると、偉大なる先人たちが残した膨大な量の文章から得られる内容も、ほんの少しということになってしまいます。

(同書より抜粋)

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「圧縮」と「解凍」については、酒井さんのお話で十分ご理解いただけたと思います。しかし今後情報通信が5Gに移行し、ますます動画が盛んになると言われる現代に、なぜ酒井さんは教育にテキストを重んじられるのか? 本日の核心です。

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テレビから飛び出してくる情報には、ほとんど圧縮がかけられていないからこそ、テレビは知的能力が開発されていない小さな子供でも楽しめるのです。しかし、そんなテレビにばかり時間を使っていては、大きな仕事をするうえで必要な想像力、すなわち高度に圧縮された情報を解凍させる能力は育たないと思います。

 

テレビよりは絵本、絵本よりは本で、圧縮された情報を解凍するというトレーニングをしておかないと、今後ますます増えていく情報を効果的に処理しつつ、時代を乗り越えていく力が養えないと思うのです。

(同書より抜粋)

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私たちが普段コミュニケーションをとるにも、言語でやりとりします。動画ではありません。つまりテキストから情報を解凍し再生させる想像力は、生身の会話でもそのまま通じます。このスタイルは今後もずっと変わらないでしょう。一種の"頭がいい"と言われる人たちは、この言語化された言葉のやりとりで、他者よりも多くの情報を引き出せるのだと思います。

 

前回の記事で私は東北大学加齢医学研究所の研究チームの大規模アンケート調査を引用しました。その引用元の記事ではこんなことが書かれています。

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ヒトは高度に進化した脳を収容する大きな頭を持つため、他の動物に比べ未熟な状態で産まれます。そして生後間もなく、身体も脳も急激な発達を遂げます。

 

なかでも言語機能の発達のピークは8~10歳と言われています。つまり、読書を通して得られる言語機能の発達という側面から見た効果は、中学生よりも小学生の方が大きいと考えられるのです。

 

(Copyright(c) SEISHUN PUBLISHING Co.,Ltd. All Rights Reservedより抜粋)

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 言語機能の発達のピークは8歳~10歳とのこと。同じ「読書」でも8歳~10歳に大量にインプットすると、のちのちの解凍能力に多大な影響を及ぼすことが伺えます。

 

しかし私たちはとっくに大人です。残念ながら過去には戻れません。ピークはとうに過ぎましたが、今からでもトレーニングは可能なのでしょうか?

 

先の東北大学加齢医学研究所の研究チームの中心人物は川島隆太教授です。川島教授は別の記事でこんなことを言われます。

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大人であっても学習を継続すると脳の体積が増える現象がMRIで確認できます。学習は、すべての年齢層で成立します。

 

(Copyright © SANNO University All rights reserved.より抜粋)

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どういうことか?

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学習によって体積が増える領域は、前頭葉前頭前野を中心とする学習と関わる部分です。脳の体積増加がどのような変化によるものなのかは、ネズミを使った実験で専用のMRI装置等で調べています。

 

例えば、何の刺激もないケージの中で暮らすネズミたちと、迷路や運動場所等があるケージで暮らすネズミたちに分けてそれぞれの脳の体積を測ると、刺激のある環境に住むネズミたちは大人になってからも脳の体積が増えるのです。

 

その増えた領域を調べると、神経細胞の数はまったく変化していませんでしたが、神経細胞から情報を送る神経線維の1本1本が長くなり、枝分かれが無数に増えていることがわかりました。つまり、脳の神経回路網がより情報を送りやすく変化し、それが体積の変化として捉えられたわけです。

 

(Copyright © SANNO University All rights reserved.より抜粋)

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さらに嬉しいことは続きます。

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学習することは、脳のさまざまな働きを高めることもわかっています。

 

例えば、ビジネスパーソンが学習して仕事に必要なスキルを身につけた場合、そのスキルとは直接関係のない能力も向上するのです。このような現象は心理学の世界で「転移の効果」と呼ばれていますが、我々が行った研究でも、前頭葉をたくさん使って新たな知識や技術を身につける学習を行うと、注意能力や抑制力が上がることが示されています。


何歳になっても学習し続ければ脳はそれだけ変化しますし、学習によってスキルや知識が身につくだけでなく、脳そのもののベーシックな働きも向上するわけです。逆に学習することをやめてルーティンの仕事ばかりしていれば、脳はどんどん退化していきます。


脳の話は難しく感じてしまいがちですが、身体と同じだと考えればいいでしょう。何らかのスポーツの練習に取り組めば、そのスポーツのための能力が高まるだけでなく、体力全般が向上します。しかし、スポーツをやめてしまえば、体力は落ちていきます。これと同じことが能でも言えるのです。

(Copyright © SANNO University All rights reserved.より抜粋)

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酒井さんの話に戻ります。

 

1冊にテレビ数年分ぐらいの内容を圧縮させることが可能な本というメディアを、ものの数時間で読解できる人間が、情報化社会においてますます有利になることはお伝えしました。

 

このテキスト化された情報をものの見事に解凍し再生させられる能力(想像力)は、どうすれば身につくのか?

 

繰り返しになりますが、それが「読書」です。

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英会話の勉強においてスピーキング(発信)よりはリスニング(受信)が先ということと同様に、圧縮(発信)と解凍(受信)では、解凍させる能力、すなわち本を読む能力の開発がまず先に立ちます。

 

同時に、良い文章にたくさん触れることで情報を解凍させる能力を磨いていると、自然に良質な圧縮の技術を学びとっていくことができます。

(同書より抜粋)

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酒井さんは良質な読書を読めば読むほど、解凍能力だけでなく、圧縮技術も学び取れると言われます。言い換えれば圧縮技術を学ぶにも「読書」が必要ということです。

 

私が生まれた昭和以前からずっと「読書」は教育に勧められてきました。しかし現代のような情報化社会においても、「読書」がこれほどの威力を発揮する源泉になろうとは、意外で驚きを隠せません。

 

酒井さんは「脳内に情報を"圧縮・解凍ソフトウェア"を組み込み、それを絶え間なくバージョンアップさせていく作業」こそ、読書のユニークな本質とまとめられます。

 

理系の象徴科目である数学や物理の難解な問題も、すべては国語が土台と言われます。問題は文章(テキスト)で書かれるわけで、その問題を解くにはまず問題の意図を的確につかむことが求められます。

 

その問題の意図を的確につかむ能力こそ、「解凍」能力です。いくら解法パターンをインプットしていても、問題の意図を汲めなければ、どの解法を用いていいかわかりません。解放パターンのインプットも大事ですが、受験生が問われるのはおそらくそこではなく、偏差値が上がれば上がるほど(難解になるほど)、差を分かつのが「解凍」能力でしょう。

 

本当は8歳~10歳に大量の良質な読書をしていれば、この「解凍能力」のみならず「圧縮能力」もすこぶる養われたはずですが、今からでも決して遅くないことは川島教授が教えてくれました。

 

何度も申しあげますが、今後通信網が4Gから5Gになり、あらゆるインプットに動画が用いられることは想像に難くありません。しかしテキスト媒体は、動画何十本分の情報量を収められます。

 

動画でしか理解(インプット)できない人より、テキストから動画何十本分の情報を素早く引き出せる人の方が、さまざまな良質な情報に触れられることは論を俟ちません。なぜなら私たちの1日は24時間と有限だからです。

 

●情報のアクセス先が動画だけの人と、テキストと動画の両方にアクセスできる人とで、どちらが多種多様な情報に触れられるか?

 

●同じ情報でも動画で理解する人と、テキストでも理解できる人と、とちらが短時間で理解できるか? どちらが場所やシチュエーションを問わないか?

 

●ある良質な情報が動画にはなく、テキスト媒体にしか落ちていなければ?

 

教育から情報化社会での成功(幸福)にまで話を広げましたが、「読書」がいかに現代のみならず「近未来」までも有能な能力の源泉となり得るか、本記事でご理解いただけたと思います。

 

実は私も読書をし始めたのが大学生のときからです。よって8歳~10歳をピークとした読書習慣は身に付けられませんでした。そういう意味では私も後天的な努力が問われ、本記事の内容をもとに、引き続き読書習慣を見守る所存です。後天的な「読書」は、川島教授が言われたように、さまざまな脳の働きを高めてくれるのですから。

 

あなたはいかがお感じになりますか?

 

次回は語彙力についてお届けします。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

引用・参考記事

www.hj.sanno.ac.jp

seishun.jp