「座位時間」と死亡率
京都府立医科大学の小山晃英助教らの研究グループは、生活習慣病予防対の基礎資料の提供を目的とした研究で、座っている時間と死亡率の関係を調べました。
結果、座っている時間が長いほど死亡率が増加することがわかりました。また研究成果を発表した座位時間と死亡率の相関関係は、余暇の身体活動量を増やしても抑制されなかったため、長い座位時間が及ぶす死亡率の上昇は運動時間で相殺できるとする既存研究の成果をかき消す形となりました。
研究の内容は?
研究は、日本人6万4456人を対象に行い、平均7.7年間の追跡調査でデータを取得。データ解析は、国際標準化身体活動質問票をベースとした質問票を用いながら、日中の座位時間の長さと、全死亡率の関係を、高血圧と脂質異常症、糖尿病の3つの生活習慣病の有無に分けて検討しました。
その結果、日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡率が15%増加することが判明。生活習慣病の有病者では、高血圧で20%、糖尿病で27%、脂質異常症で18%の死亡率の増加が認められました。
さらにです、座位時間と死亡率の関係は、被験対象の3つ全て(高血圧・脂質異常症・糖尿病)を保有している人で、42%も死亡率が高くなるなど、生活習慣病の保有数に応じて大きくなることも明らかになりました。
余暇の運動でこれらの死亡率は相殺できないのか?
死亡率を余暇時間中の身体活動の量に応じて、4群に分けて解析。すると、余暇時間の身体活動が増えても、座位時間による死亡率の減少効果は少なかったとのこと。
実はノルウェー・スポーツ科学大学のウルフ・エクランド教授が、座位時間が長いほど早期死亡リスクが高まる研究成果を2019年に発表し、その際に高レベルの身体活動を約1時間継続すると、8時間以上の座位による死亡リスクを除去できることも明らかにしていました。
今回の小山晃英助教らの研究結果は、上記のエクランド教授の研究結果に疑問を呈する形となり、今後にますます詳細な研究が課題となる模様です。
私も以前から本や動画などで、座位時間の長さが健康に悪影響を及ぼすことは知っていました。私は内勤の仕事ですから、意識しなければ座位時間が長くなりがちです、そこで今でも意識的にこまめに動くようにしています。
あなたも普段の生活で座位時間が長いとお感じなら、ぜひこまめに身体を動かし、ストレッチなどを取り入れられることをお勧めします。
同じ姿勢を保つだけでも血流は滞るのに、それが座位となればなおさらでしょう。血流と言えは、第2の心臓と呼ばれるふくらはぎを使うことが大事です。心臓から足先まで下流に流れた血液を、また心臓に戻すのは足の裏~ふくらはぎのポンプが必要になります。エコノミークラス症候群はこのポンプの役割が働くなることで起こります。足先まで流れた血流を、再度心臓に戻すのは、自然と行われるように簡単なことではありません。
また勉強などで頭脳を酷使し過ぎた場合も、脳に大量のグルコースや酸素を運ぶため、血流が増えます。代謝が促され、代謝亢進から熱を帯びます。同時に血流が高ぶる熱を奪い去りますが、酷使すれば血流のそれが追いつかず、正常な機能を失います。「頭を冷やす」という言葉がありますが、休み休みクールダウンさせないと、頭がぼーっとし、思考力が鈍ることはもちろん、全身の疲れへと波及します。
水分と酸素、栄養素の補給を適切に行い、全身の血流を円滑にすることが健康の基礎です。この基礎を疎かにし、どこかの部位に負担を重く乗せることは、余暇に運動等で挽回しようと思っても、身体はそのようなメカニズムになっていないと、小山さんらの研究が明らかにしたのかもしれません。
病気やケガでも同様です。一度なったらそれから一朝一夕に回復を遂げることは非常に難しく、そもそも病気自体が一朝一夕で起こるものではないからです。最近よく耳にする「若年性認知症」も例外ではありません。徐々に進行すると言われます。
平時にどれだけ意識し予防に勤(つと)められるか。目先の成果に邁進するあまり、健康の基礎(全身の血流を良くすること)を忘れては後で悔いても時間は巻き戻せません。
「座位時間と死亡率」
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
引用・参考記事