美しい花「完全燃焼」
通常は「ゆとりをもって8割程度に抑えることが生きるうえでも人生においても重要」と言われます。私もその考えには賛成です。しかしそれはあくまで精神的なことという条件がつきます。精神的にいっぱいいっぱいになることと、肉体面や行動面でやり切ることとは意味合いが異なります。
「神は細部に宿る」と芸術を中心に言われますが、最後の最後まで出し惜しみせずにきちんとやり切ることは、仕事でも私生活でも大事なことです。これを仕事において一言で強調されたのが国会議員から社長に戻られた渡邉美樹さんです。
渡邉さんは「とどめを刺す」という言い方を当時(国会議員になるまでの社長時代)からされていて、それだけ最後の詰めの甘さが成否の「否」を招いてしまうことを体験からご存じだったのだと推測します。
本日は「とどめを刺す」と同様、一日の完全燃焼を後押ししてくれる言葉を二つ紹介します。スパンは一日ではなくても一週間でも一か月でもけっこうです。
「人間の力は、全部出し切らないと増えない。出し切らずに溜めたら逆に減ってしまう」
この言葉は藤尾秀昭著「十万人が愛した言葉(2019年7月発売)」という本に掲載されていたものです。伏見工業高校の選手は、試合中に手を抜こうものなら上記の言葉で厳しく叱られたと言います。エネルギーの出し惜しみは選手の成長を阻むと考えての言葉です。
この言葉のおもしろいところは、出し惜しめば逆に減ってしまうと捉えている点です。確かに今日に出し惜しめば、明日も"ま、いいか”と流れてしまいがちです。それだけ人は弱い生き物のため、今日に厳しくすること以外に明日や未来を強くする方法はないと言えます。
次に紹介する言葉は以前にも当ブログで紹介しましたが再度お伝えします。
「桜が咲いている。皆,ああ美しいなというだろう。しかしその美しい桜は,自分の生命を燃やして花を咲かせている。美しい姿は,自分の生命を完全燃焼しなければ作り出せない」
by 中村元(哲学者)
この言葉は上掲の渡邉美樹さんの著書「夢に日付を(2005年10月発売)」に載っていたもので、私が個人的にとても素敵に感じ、今でも愛用しています。“一日を完全燃焼したい” そう思わせてくれます。
いずれもタスクや行動面での"完全燃焼”で、精神的にいっぱいいっぱいになる教えではありません。また一日を仕事尽くめにしたり、筋トレなどで追い込みすぎて逆に明日に疲れを残すことは避けたいところです。
では何が"完全燃焼”なのか?
それは「質×量」の最大化を見据え、自分が決めたことをやり切ることにあると思います。
例えば先のラグビー選手を例に挙げれば、質が練習メニューの改善、量が練習量で、両方からのアプローチがあります。もし練習量が上げられないなら、練習の質を変えるしか方法はなく、質を変えるために自分が決めたことを一日一日やり切ることです。
平成の終盤からはますます質の改善がビジネスシーンを中心に求められるようになりました。掃除はロボット掃除機に、家事は家事代行に、自社で抱えず外注に、などIT化やシェアリングサービスの導入です。そうすることで、量の中身の配分を最適化でき、それが結果(質×量)の最大化につなげられるというわけです。
しかし健康のための筋トレやランニングなど、アナログな面はなかなか質の改善が難しく一定の時間をきちんと割かなければ、結果が維持できない、見込めないという分野もあります。同じことを同じように繰り返すことや悪習慣を断つことの繰り返しなども同様です。それはそれで繰り返すこと自体が習慣形成につながるため、形成されるまでは自分で決めたことを"完全燃焼”することが大切です。
最後に私の好きな言葉をもう一つ紹介します。
「悠々として急げ」
by 開高健(1930年- 1989年 日本の小説家)
この"急げ”の部分が"完全燃焼”の意味と重なります。あくまで精神的には8割程度まで追い込み、タスクや行動面は "完全燃焼””やり切る”“とどめを刺す” 。その様(さま)が傍から見れば急いでいるように見え、実際に成果までのスピードがアップしているイメージです。
次回も本日の続きをお届けします。
次回は精神的にいっぱいいっぱいにならなくて済む言葉を紹介します。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。