「仕事」が辛いあなたへ
昭和の高度経済成長期は、働いたら働いた分だけ企業も個人も実入りが増加したイメージでした。もちろんその中にも、大手企業の値下げ要求に耐えられず、倒産に陥った下請け企業等もあったことでしょう。しかし全体的には「1億総中流」と呼ばれ、世にお金が回ったとされます。
しかしモラル面はと言えば、パワハラやセクハラなど、各種ハラスメントは横行していました。
現在はその逆です。残業規制が敷かれ、非正規社員の増加に格差の増大です。しかしパワハラやセクハラ等の各種ハラスメントの規制は厳しくなり、大手企業ほど自制を重んじられます。
当時と現在をざっと比較しても、一長一短があります。現在の人にどちらがいいかのアンケートを行っても、おそらく半々に分かれるか、現在の方が多数になる気がします。
さて、本日は「仕事が辛いあなたへ」です。
私は正規社員と非正規社員のような雇用形態で幸・不幸は決められないと思っています。なぜなら現在は先にあげたように残業規制により、非正規社員の大方は定時で上がれる状態にあり、残りの時間で副業や趣味、家族や遊びの時間に興じられると思うからです。お金はカツカツかもしれませんが、心豊かな精神は享受できます。
一方正社員や役職がある方は、非正規社員より責任は求められるため、定時に上がれないかもしれませんし、責任を課せられる分だけ疲弊し、オフの時間は建設的というより、ストレス解消のニュアンスで使用することになるかもしれません。
人によって一概には括れませんが、どんなポジションにいても、当人の考え方や気の持ちようで幸・不幸の感じ方は変わると思います。
前回の記事で紹介した、20年以上前から麻雀の業界で名を馳せている桜井章一さんは、"仕事を苦痛に感じているなら、いったん仕事を疑い、仕事から離れてみよ" と言われます。前回の記事の繰り返しになりますが、桜井さんは学生時代から麻雀の裏プロの世界で名をとどろかせ、ついに20年間無敗という記録を打ち立てられました。現在はもう77歳ですが、今もなお雀鬼会の会長として後進の育成に励まれます。
桜井さんのお考えを少しだけ紹介すると、もともと資本主義を嫌い、ビジネスを嫌い、大きいもの(権力者)を嫌う思想の持ち主です。弱者救済の考えを前面に出され、「小」を守ることこそ男の本懐と説かれます。そんな桜井さんですが、著書「諦める技術」でも『「仕事が人生」の生き方から逃げる』という項で次のように語られます。
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そもそも働くことに価値をもたせるよう仕向けたのは、そうしないと会社や経済が回らなくなって困る経営者など権力を持った人間である。労働は尊いものだ。仕事は人生で一番大事なものだ、と。その意味では仕事は尊いという考え方は、一つの思想であり、宗教であると言ってもいいだろう。
もちろん、この社会を動かすにはなくてはならない仕事はあるが、労働を美化しすぎると、雇われる側は経営者のいいように扱われてしまう。
その昔、森や川で狩猟採集をして暮らしていた頃の人間は一日にせいぜい2,3時間くらいしか働かなかったそうだ。そんな狩猟民族の遺伝子はわれわれのなかにもあるはずである。朝から晩まで働いている現代人のあり様は生物学的にはちょっと異常なのかもしれない。
(同書より抜粋)
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よく仕事は「自分磨き」や「成長」につながると言われますが、桜井さんはそれを疑わしいこととし、次のように言われます。
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自分のなかにはいままで気づかなかった素晴らしいものが潜んでいる。自分磨きを頑張れば、それが姿を現す。そんな感覚が「自分磨き」という言葉にはある。
だが、自分磨きによって目指すものが、お金や知識を増やすためのありきたりな成長であれば、そういうものを「磨く」とはいえないと思う。私からすれば「磨く」ではなく、反対に「飾り」や「見栄」をたくさん身にまとう行為のように感じてしまう。
私の考える成長は、世間の人が望む成長とは違う。それは本能の声を聞きながら、暴走しがちな知性や理性にブレーキをかけつつ、人間や自然について感性や体を使って学んでいくことだからだ。
私にとっては、機械的に知識を増やしたり、金儲けのためのテクニックを身につけたりすることは、成長でもなんでもなく、むしろ退化のようなニュアンスさえある。
自然から離れていくようにして自分を成長させると、際限のない競争に己を埋没させることになっていく。自分を磨くと思って執着する仕事は実は心を摩耗させるばかり、なんてことになってしまうのだ。
(同書より抜粋)
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いかがでしたでしょうか。
先日紹介した中野信子さん(脳科学者)の「努力は野蛮」に通ずるものを感じます。目に見える評価(相対評価)に埋没すれば、自分を見失い、いつかは精神を病んだり後悔に陥るかもしれません。そうなる前の予防として、桜井さんのような考えを常に身体のどこかに染みこませることは、自分を守るうえで非常に大切に思います。
本業にしろ、副業にしろ、仕事は本来"やらされ感"でするものではありません。本業なら仕方がないにしても、それでも限度があります。収入や職歴も大事ですが、「命」や「生命」以上に大事なものはないと常々言い聞かせ、余暇の時間はこの上なく有意義にお過ごしいただくことをお勧めします。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。