猿真似ではない「真似」
先日に私は次の本を読みました。
竹之内教博著「無名の男がたった7年で270億円手に入れた物語」
読後の感想ではないですが、この本のエッセンスを一言でまとめると次です。
「真似をしなさい」
もちろんほかにもいろいろと有益な内容は盛り込まれていますが、強いてあげればそれになります。では真似をすることはそんなに目新しい"教え"でしょうか? 特に目新しくありません。これまでも数々の成功者が言われてきたことです。ではなぜ改めてこのテーマに触れるのか? それはたくさんの人が言われてきたからこそ、教えの中のワン・オブ・ゼム(one of them)に薄れたきたこと、そして竹之内さんのそれは少し特別な意味を含んでいることの2点にあります。
竹之内さんが270億円を手に入れたのは、600店舗に広げたマッサージ専門店「りらくる」の株式を英投資ファンドに90%を売却したからです。この「りらくる」のビジネスモデルは他店を真似たことで生まれ、その後の各種のビジネスもすべて他店の成功モデルを真似て行われているとのこと。
言葉にすれば簡単ですが、そこには深い分析が隠されています。先に私は竹之内さんの真似は特別な意味を含んでいると書きました。ただ真似るのではなく、「なぜ成功しているのか?」「本当に成功しているのか?」の分析が大事ということです。
インターネットビジネスの世界ではよく「再現性」という言葉が使われます。"誰でも稼げる" という集客の謳い文句です。竹之内さんの真似も実はそこを重視します。例えば長年にわたりブランドを構築してきたルイ・ヴィトンを真似ようと、同じように高級感を出し、同じようなロゴを使い、同じような高級品を販売してもうまくいくはずがありません。つまり分析の一つは猿真似での成功可否の判断です。
またある店舗が流行したとして、それはビジネスモデルが原因なのか、それとも立地にあるのか、それともその両方なのか、その判断も分析の一つです。
単純に売れている商品、売れているサービスを真似ればいいわけではなく、その原因をつかむ分析を前にもってきているところが竹之内さんの成功要因です。しかし実際は、そこまで完璧につかむことも難しいです。そこで「スモールスタート」で実験をするのが竹之内さんの定石です。「りらくる」も一店舗目から多店舗展開が可能かどうかの試金石を見ていました。それが吉と出たため、同じ形で同じ立地で同じ内容で二店舗目と増やしていきました。そこからは怒涛の勢いで1ヵ月で10店舗のペースです。
これまで「真似ること」の通念は、「学ぶこと」の出発点とし、そこに「守・破・離」の教えを用いてきました。基礎を固めて少しずつ自分流にアレンジしていく教えです。しかし竹之内さんの「真似ること」はビジネスにおけるそれなので、内容はおのずと異なります。ビジネスはしくみやロジック、環境要因でつくられます。ですので、成功要因という名の「原因」をつかまなければ、成功が再現できません。つまり分析なしに真似をしてもそれはただのギャンブルというわけです。実際竹之内さんも原因から離れたチャレンジをし、見事に失敗、それはギャンブルだったと反省の弁を語られています。
私たちにおいても、とても大事な教えがそこに横たわっています。例えば投資。会社員がチャートに張り付き売買することは至難の業です。にもかかわらずチャート分析に重きを置くスクールやセミナーに足しげく通う会社員もいます。また不動産投資も属性の高い医師や弁護士、公務員などは簡単に融資を受けられますが、中小企業の会社員はそうはいきません。株式投資のファンダメンタルズ分析でも、専門家に集中投資を推奨する人がいますが、会社員が半端にそれをやっても成功確率は極小です。会社員ならインデックスファンドへの分散投資が定石です。
このように投資だけ見ても、自分の向き・不向きがあり、なんでもかんでも成功例を真似ればいいわけではありません。自分の現在地や適性を把握し、自分に合ったモデルを見つけることが大切です。
まとめます。
我流でスタートをするのではなく、必ず成功例を見つける。見つけたら成功要因を分析する。分析したら自分に当てはまるかを確認する。当てはまったものだけを「スモールスタート」で実験する。実験が成功したらそれを広げる(大きくする)。実験が失敗したら失敗要因を分析する。改善できるなら改善し、改善できないなら新しい成功例を見つけて再スタート。こんな感じです。
竹之内さんが口を酸っぱくして言われたのは「成功例」からスタートをするということ。この世にないものは、誰かが失敗をしたからとの見立てです。誰かの失敗を真似るのは、時間とお金、労力の無駄です。必ず「成功例」からスタートし、分析をし、原因と再現性を確認し、自分に落とし込む流れです。
竹之内さんの著書で改めて「真似ること」の大切さを感じました。副業でも "我流では上手くいかない" という話はよく聞きます。先達(成功者)からきちんと教えを請い、成功要因を腹落ちさせることが成功への手堅いルートです。ただしどの道、100%はないため、先述した「スモールスタート」を切ることが得策で、言い方を変えれば「逃げ道」や「撤退」のルールを決めておくことが、再起のためには非常に大切です。
猿真似ではない「真似」
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