「オメガ3脂肪酸」と心疾患リスク
「オメガ3脂肪酸」とは何なのか?
「オメガ3脂肪酸」とは油脂を構成する成分のひとつで、俗にDHAやEPAと言われるものです。健康食品やサプリメントでそれらを耳にされたこともあるかもしれません。
テレビの健康番組等で、数年前からこの「オメガ3脂肪酸」は話題に上がっていました。理由は動脈硬化の予防と改善が、数々の研究で期待できることがわかったからです。
50年ほど前にデンマークで行われた大規模な疫学調査を見てみましょう。北極圏に住む先住民族のイヌイットは、一般的なデンマーク人に比べて、動脈硬化が原因となって起こる心筋梗塞による死亡率が有意に低くありました。
生理学者のヨーン・ダイヤベルグ博士は、その理由を解明するためイヌイットと暮らしを共にしながら調査を開始。すると、彼らが一般的なデンマーク人よりも「オメガ3脂肪酸」を極めて多く摂取していることが明らかになりました。
ダイヤベルグ博士によれば、イヌイットの1日あたりのオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)の摂取量は13.4gにも達するといいます。現在、日本の厚生労働省が推奨する目標値が1日あたり1gですから、私たち日本人の実に10倍以上を摂取していることになります。
では、彼らのその摂取源は何なのか?
調査団は、人口の8割がイヌイットといわれる、カナダ・ヌナブト準州の州都イカルイトを訪ねました。長老たちの食事会を見学すると、彼らが好んで食べるのは、アザラシやクジラ、シロイルカなどの脂身。さらに、脂がたっぷり乗ったシロクマの肉もおいしそうに食べていました。いずれも、オメガ3脂肪酸の一種、DHAとEPAが極めて豊富に含まれます。
ここで表題に戻ります。
動脈硬化が心臓の血液で起こってしまえば、それは虚血性心疾患と言われ、狭心症や心筋梗塞がそれにあたります。オメガ3脂肪酸は動脈硬化を招きにくくし、心疾患リスクを下げることがすでに実証されています。今回の最新の内容は、体内の炎症を抑えて治癒を促す白血球にDHAとEPAが与える影響を比較したことにあります。
DHAもEPAもこれまでは横並びで同じように扱われていましたが、今回の実験で若干この両者に違いがあることが確認されました。実験を行ったのは米タフツ大学ジーン・メイヤーUSDA加齢ヒト栄養研究センターの循環器栄養チームに所属するステファニア・ラモン=ファヴァ医学博士。
結果から両者の微妙な違いは何だったか?
EPAとDHAは、どちらも白血球を循環させることで炎症促進性タンパク質の産生を抑えることでは優秀でした。しかし治癒プロセスに必要なタンパク質と細胞を活性化させるのはDHAではなくEPAであることがわかりました。よってラモン=ファヴァ博士は、DHAよりEPAの方が抗炎症作用と治癒作用のバランスが良いと考えられます。
私はどちらもサプリメントで摂取していませんが、摂取するなら、EPAの方がやや優秀ということかもしれません。
最後に私たちの食生活における「オメガ3脂肪酸」の摂取源について。
それは魚介類です。とにかく食事に魚介類を取り入れることが大切です。マグロのトロやイワシ、サンマ、サバなど。変わり種だとあん肝や、イクラ、キャビアなどの魚卵です。
もっとも簡易に取り入れたい方には、イワシ・サンマ・サバの水煮缶やみそ煮缶。麻布大学の守口徹教授の分析によれば、市販品ではいずれも100gあたり2gを超えるオメガ3脂肪酸が検出されたとのこと。これは厚生労働省の摂取目標の2倍です。
また「オメガ3脂肪酸」は、たんぱく質と一緒に摂ると、胆汁が分泌され、より効率的に吸収されることもわかっています。ですので、魚介類で摂った方がサプリメントよりも吸収率が良いということになります。
「オメガ3脂肪酸」と聞くと、私が当ブログでもよく触れる「亜麻仁油」や「えごま油」はどうなのか?と思われるかもしれません。
亜麻仁油やえごま油などは、確かに「オメガ3脂肪酸」を含みますが、魚介類に多いEPAやDHAとは異なり、αリノレン酸という成分です。このαリノレン酸は、私たちの身体の中でDHAやEPAに変換されないと、良質な細胞膜の材料にはなりません。そしてその変換効率は5%~10%と言われています。また、乳幼児はこの変換能力が成人に比べて低いという報告もあります。よって「オメガ3脂肪酸」を(吸収率などを考慮し)効率よく摂取するなら、やはり「魚介類」が最善となります。
「オメガ3脂肪酸」と心疾患リスク
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