「オメガ3脂肪酸」と片頭痛
青魚に主に含まれる「オメガ3脂肪酸」は、心疾患由来の死亡率や中性脂肪値を下げる可能性が示されているほか、近年の研究では「ガン腫瘍を殺す」様子も確認されています。そんなオメガ3脂肪酸について、新たに「片頭痛の頻度を下げる」という研究結果が発表されました。
研究結果を発表したのは、アメリカ国立老化研究所のクリストファー・ラムスデン博士らで、ラムスデン博士らは月あたり5～20日は片頭痛が生じるという182人を被験者とし、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取量が、片頭痛の頻度と重症度に与える影響についてを調べました。
まずオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸のどちらにも含まれる「オキシリピン」という分子の前駆体についてからです。オメガ3脂肪酸由来のオキシリピンは痛みを抑えるのに対し、オメガ6脂肪酸のそれは逆に痛みを増幅させる作用をもちます。
実験ではこの相反する両者を次の3種に分けて摂取してもらいました。被験者は月あたり5～20日は片頭痛が生じるという182人の方です。
この3種類の食事法のいずれかを被験者にランダムに割り当て、各被験者は割り当てられた食事法を16週間にわたって続けました。なお、各食事法はそれぞれに似通った内容になるように定められ、オメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸の増減は調理油・バターの種類やタンパク質を主とする魚などの食材によって調整されました。
16週間後に被験者を調べたところ、「2．」と「3．」は、オメガ3脂肪酸を増量しただけに、オキシリピンの産生量が増加しました。しかし片頭痛の重症度は大きな変化はみられず、されど片頭痛が起こる頻度は大幅な減少がみられました。
「2．」は1日の頭痛時間が1,3時間減少し、かつ頭痛発生日数は1ヵ月当たり2日減少しました。
「3．」は1日の頭痛時間が1,7時間減少し、かつ頭痛発生日数は1ヵ月当たり4日減少しました。
実験結果は以上ですが、これだけみると、"やはりオメガ3脂肪酸は片頭痛にも効くのだな～"と漠然と思ってしまいます。が、実は今回の実験の被験者は女性が多かったことや子供や高齢者を対象としていないこと、魚油以外のオメガ3脂肪酸を試していないことなど、「オメガ3脂肪酸が片頭痛の頻度を下げる」を断定するには材料が少ないことがラムスデン博士より指摘されています。
またオメガ3脂肪酸以外の成分が原因となっているかもしれないことも、同じくラムスデン博士より指摘されています。例えば「サーモンの摂取量を増やすと、オメガ3脂肪酸の摂取量だけでなく、ビタミンDやセレンなど他のいくつかの微量栄養素の摂取量も増える」というようなことです。
何が原因でどういう結果につながっているかをピンポイントに断定するには膨大な実験と精緻な分析が必要になります。私はこの話を知り「一物全体」という言葉を思い浮かべました。
魚油だけを抽出するのではなく、また（一部が体内でオメガ3脂肪酸に変換される）αリノレン酸だけでもない、生き物としての魚全体を丸ごと摂取するということです。それが栄養バランスに最適なのは言うまでもありません。博士がおっしゃるように、例えばサーモンでもビタミンＤが豊富に含まれていますし、その他の成分も多種存在します。それらが生き物としての構成を担っているわけで、同じ生き物として、その構成をまるごといただくことが、私たちの人体にもっとも望ましい作用をもたらすことは自明の理で自然の理だと思います。
昨今の「脂質」において、「オメガ3脂肪酸」はとかく注目されていますが、その王道は魚油であり、魚油といってもサプリメントのそれではなく、魚全体を丸ごと食べるそれです。魚全体を丸ごと食べれば、片頭痛のみならず、冒頭で申し上げた心疾患由来や中性脂肪、がんのリスクを下げることにも一番確率性を高めてくれるはずです。
私のお勧めの食べ方・食品は「食べる小魚」です。「食べる小魚」をお味噌汁に入れ、すこし柔らかくして食べます。ほぼ毎日いただいていますが、ぜんぜん飽きず、食べるたびに、オメガ3脂肪酸だけでなく、カルシウムやビタミンＤを摂取できると思い、テンションを高められています。また他にお手軽なもので、さばやいわし、さんまの缶詰などもお勧めです。
あなたやあなたの周りの方で、片頭痛をお持ちの方がいらっしゃれば、オメガ3脂肪酸だけとは断定できない今、一番頻度を減らす確率の高い「青魚」を、これまで以上に食卓に並べるのを勧められてみてはいかがでしょうか。きっと片頭痛だけでなく、あらゆる健康効果に寄与してくれるものと思います。
次回も「オメガ3脂肪酸」についてお届けします。本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
引用・参考記事
