年齢と時間の「価値」
2010年に発売された太田正文さん著『人生を変えたければ「休活」をしよう!」に、こんなことが載っています。
「時間は1秒ごとに価値を増している」
著者の太田さんが、さまざまな勉強会や交流会に足を運び、学びを増やしていたときのこと、資産70億円を有する70代の女性と次のやりとりがあったそうです。
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その女性は、僕に、しきりにこんな言葉を言うのです。
「あなたはいいわね、若いから。これからなんでもできる可能性があるじゃない」
最初、僕はこの女性が、なぜこのような言葉を言うのかわかりませんでした。
「なぜ、そんな言葉を僕にかけてくれるんですか?あなたは、十分しあわせではないのですか?」
すると、その方は、やさしくこう応えてくれました。
「・・・時間は、いくらお金を積んでも、誰にも買うことはできないのよ」
この言葉を聞いたとき、僕はこの女性に教えられたのです。人生で本当に大切な財産は、お金ではなく時間であり、人生の残り時間が短くなればなるほど、時間の価値は増すということを・・。
(同書より抜粋)
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10歳の子の24時間と、70歳の感じる24時間の価値は同じではなく、時間が1秒、1秒と経過するごとに、確実に人生の終わりに近づき、ゆえに1秒ごとに時間の価値は増していると太田さんは言われます。
本当にそうでしょうか?
私は当時も今もこの考えにピンときません。言わんとされることは理解できますが、その時、その歳、その年代でしかできないことに「価値」を見い出すのが私の考えです。ですから、10代も20代も、そして70代も時間の価値は等しく平等という認識をもちます。
例えば最近流行(はや)りの「資産形成」。若いときから積立投資をすれば、複利の効果で資産は遅く始めたときより、多分に形成できます。
例えば習慣化。幼少のころから両親に甘いものを与えられ、学生時代も甘いものが身近にあれば、大人になってからの糖質制限は、その他の人より相当厳しいはずです。反対に幼少の頃から健康的な食生活を板に付けられてきたら、大人になってからも健康的な食生活がデフォルトになるでしょう。
以前に旧村上ファンド代表 村上世彰氏を紹介した折、安易な借金を戒める内容をお届けしました。その中の事例に教育ローンの破綻があげられましたが、「お金」だけを見れば、高卒で働き始めた方が数年後の貯金額は多くなります。
しかし価値を「お金」におかず、「学び」や「遊び」に置けば、大学や専門学校でしか経験できないことを、教育ローンを利用して体験できることになります。
大学や専門学校の中でもまた千差万別です。先に書いた「学び」に価値を置くのか、「遊び」に置くのか、はたまた「旅行」とするのか…
学生時代で私が唯一まずいと思うのが「アルバイト」です。アルバイトは仕事のカテゴリーゆえ、社会人になってもできますし、アルバイトに精を出すくらいなら、社会人ととして勤しんだ方が、上の世界が開けます。
学生なら学生でしかできないことをして、初めて「価値」が付随する考えますが、学生でしかできないことは、自分で答えを見つけるしかありません。
どのサークルに入るか、どの講義を受講するか、実家暮らしか一人暮らしか、さまざまな選択があるなか、何かを決めなくてはなりません。
その指針は「納得感」だと思います。「今の自分」ではなく「未来の自分」の納得感です。
例えば大学生時代に海外旅行に行きたいと思ったとします。しかし学校から宿題も出るし、彼女(彼氏)もできたばかりだし、バイトで学費も稼がないといけないし・・と特段"海外旅行に行かなくてもいい"理由はどんどん見つかります。
しかし社会人になった自分をイメージすれば、果たして1週間も2週間も海外旅行に行ける暇(いとま)ができるのか? もしかしたら定年退職まで一度も暇(いとま)ができないのではないか? 海外旅行に行ったら将来を左右するような出来事に出会えるかもしれない、価値観が変わる何かに出会うかもしれない・・・
そして「社会人の自分」は「なんだかんだの理由で海外旅行に行かなかった自分」と「あらゆる理由を棚上げし、なんとか海外旅行に行った自分」のどちらに納得するか?
「今の自分」に相談しても、安きに流れるのがオチなのに対し、「未来の自分」に相談すれば、艱難を突破するモチベーションが生まれるのが人間の潜在能力です。
「未来の自分」を納得させるために「今日」があると考えれば、今日の決断は「未来の自分」と相談した結果であり、その行方に後悔は生まれないでしょう。つまりは著者の太田さんと話した資産70億円の70代の女性は、資産を築くことに勤しむあまり、大事な経験、大事な選択をスポイルしたのかもしれません。
私の好きな名言に次があります。
「今できないことは、10年後はもっとできない」
モチベーションはどんどん薄らぎ、体力も薄らぎ、環境も関心事も10年後は様変わりすることでしょう。
私の好きな名言をもう一つ。
「人間には無限の可能性がある。しかしたった一つしか選べない」
by 川原成美(一風堂創業者)
選ぶべきたった一つは「未来の自分」を見据え、芯から納得できる対象です。
おそらくその対象は、そのとき、その歳、その年代でしかできないことが多数と思います。今の自分の気持ちを大切にし、実行に移すことが、未来の自分を大切にすることと同義と考えます。先の海外旅行では、海外旅行に行きたいという気持ちをそのまま実行に移すことが大切ということです。
私は現在39歳ですが、70歳では到底できない可能性を手にしていると思い、70歳ではできないことを今の環境で行う、それが70歳の自分を喜ばせることと同義と考えます。
つきましては、私は70歳の自分より、現在の39歳の方が時間的価値ははるかに高いと考え、70歳の自分は90歳の自分よりはるかに時間的価値は高いと思って生きる所存です。
未来の自分は今の自分に到底及ばず、未来の自分を喜ばせられるのは今の自分、それほど今の自分は尊い反面、今の自分の価値に気づかせてくれるのもまた未来の自分、そんな逆説を人生の妙味と言うのでしょうか。
あなたはいかがお考えになりますか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。