なぜ「無理は禁物」なのか?
よく上司や家族、友人などから "無理はするなよ" などと声をかけられることがあります。そして私たちもそのような声を(誰かに)かけることはよくあります。
このことに関連して、世界一の投資家 ウォーレン・バフェット氏は各所で次のような事例を出されています。
「人間を、一生に一台だけプレゼントされた自動車だとしたら?」
「自分」という人間を一台の自動車に例えています。その自動車でおよそ80年間、長ければ100年間を乗り続けなくてはいけません。そうすればどうするか? サビないように手入れし、傷がつけば修理をするでしょう。つまりオンボロにならないように気をつけます。そうしないと80年間を楽しくまっとうすることが難しくなるからです。
また自分という名の自動車がオンボロになり、走れなくなったとします。さすれば周りの人のサポートが必要になります。それを人によっては申し訳ないと思ったり、そういう自分を不甲斐ないと思うかもしれません。
バフェット氏は「無理は禁物」とだけ訓示をされるわけではありません。それ以上に「自己投資」の大切さを結び付けています。
つまり自分をいたわりつつ、自立できるだけの自分を作りあげるべきと言われるわけです。実際にバフェット氏は「なぜ投資にそんなに勤しむのか?」という問いに「自由」や「自立」を答えられています。
自分の尊敬する人たちに囲まれ、自己投資をできるだけの優雅な時間を自分に持たせたるためには、経済的に優れなければいけません。その境地にいち早く辿り着きたく、節約に質素を心がけ、浮かせた資金をバリュー投資に賭けてきました。そして圧倒的に成功した今(90歳)も、見事なまでにその姿勢を崩していません。つまり現在もなお、尊敬する人たちに囲まれ、与えられた時間を自己投資に費やしているということです。
10兆円の資産があってもなお、生き方や考え方を当時から変えないバフェット氏。その姿がそんじょそこらの小金持ちを一蹴するように、信用・信頼の対象となり、「オマハの賢人」と呼ばれる所以(ゆえん)をつくりました。
さて、話が脱線しました。本題は「なぜ無理は禁物なのか?」です。答えは『「自分」の代替えは利かないから」です。拍子抜けな答えですが、バフェット氏が若い人に何度もこの自動車のたとえ話をされるのも、それだけ重要なのに日常に忘れがちだからだと思います。
バフェット氏の有名な名言の一つに「リスクは何をやっているかよくわからないときに起こる」があります。裏を返せば「何をやっているかわからることをすべし」ということで、そのための「無理は禁物」、そのための「自己投資」なのです。
今日を一生懸命生きることは大切です。しかし今日を一生懸命に生きたがばかりに、明日を疲弊させてはいけません。「腹八分目」という言葉がありますが、この言葉はすべての的を射ていると思います。健康志向も八分目、仕事も八分目、真面目も八分目です。入浴も熱すぎは良くなく、「いい湯加減(八割くらいの熱さ)」が最適です。そして二割は遊び、休憩、余暇、リラックスです。現実が八割なら、二割は未来です。何にしても十割をもってきては、ゆくゆくにバランスを崩します。
あくまで人生は「長距離マラソン」。そのマラソンを楽しく前向きに完走するには、なるべくどんな対象にも十割をもってこず、八割くらいを妥当におおらかに構えるのが良い気がします。
「なぜ無理は禁物なのか?」
A. (人生という長丁場に)「自分」の代替えは利かないから
長距離マラソンといえども、人の数だけ車種が違います。人の数だけ道が違います。人の数だけ距離も違います。自分ならではの車で、自分ならではの道を、自分ならではのペースで完走するのが「人生」です。精神的に無理をせず、心のケアを大切に、心のケアそのものが「自己投資」の土台を担うからです。
最後にもう一度バフェット氏の言葉です。
「(自分という)人間を、一生に一台だけプレゼントされた自動車だとしたら?」
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。