「ナチュラルメイク」の秘密

脳科学者の茂木健一郎さんの著書に「続ける脳」（2018年1月発売）があります。その中に私がとても勉強になった話が載っています。私自身の体験からもひどく納得させられる内容だったため、あなたにもシェアします。

茂木健一郎さんはこう思ったそうです。

「簡単に見えるものほど、実は、丁寧に手間がかけられているのだな」

そしてまとめます。

「だから自分もゆっくり焦らず進めよう」

茂木さんがテレビの仕事でメイクさんにお世話になったときのこと。茂木さんと一緒に仕事をしている女性アナウンサーが本番の一時間前にメイク室に入ったことから、茂木さんはメイクさんに次のように質問します。

「ナチュラルメイクなのに、なぜそんなに早く準備をする必要があるのか」

メイクさんは答えます。

「茂木さん、女性のナチュラルメイクに見えるメイクには、手間がかかるんですよ」

その答えに茂木さんは冒頭の思いをもったそうです。

私はこの話を読み、以前にどこかで聞いたことのある話を思い出しました。それは次のようなことです。

「"普通"の人が一番すごい」

どこで聞いたかは忘れましたが、"普通"を維持するのは実はたいへんなことという意味だったと思います。体型も体調も髪型も、、、どれも毎日しかるべきことをやってできるものです。そのしかるべきことを継続することの"凄み"を訴えた一言なのでしょう。

茂木さんは同じ話の中でレオナルド・ダビンチの作品「モナリザ」にも触れています。「モナリザ」はただの薄化粧に見えるけど、あの肌を作るのに膨大の工数を踏んだに違いない・・と。

その点、20年前の女子高生に流行った黒ギャル（やまんばギャル）は、私が言うのもなんですが、ただ塗りたくればいいというセンスのなさが見え隠れします。別に否定するわけではないですが、手間のかけ方や技量はある種のナチュラルメイクとは比べ物にならないと思います。

ひとえに「ナチュラルメイク」といっても、年代やその人の肌質などで、工数は変わってくるわけなので、世のナチュラルメイクがすべて、手間暇をかけているとは思いません。

しかし手間暇かけている人もいるという現実は、いたるところで頭の片隅に入れておくことは、いろいろな気づきや感動につながると思います。

ファッションもしかりで、派手な服やブランド品を着飾ることは、先の黒ギャルと同様、品やセンスに欠けるところがあります。10代や20代前半までならまだしも、30代以降は厳しいでしょう。30代以降は「いかに"らしさ"を発揮できるか」の工数が求められます。

話しを戻します。

茂木さんが最後にまとめた言葉がとても心に響きます。

「だから自分もゆっくり焦らず進めよう」

「自分」に手間暇をかける大切さを唱えています。

いかにも"メイクしてます"というメイクはすぐできれど、一見化粧をしていないように見えるメイクは、細かい作業（工程）が必要であるということ。これは（自分）"らしさ"の追求も一朝一夕では成せず、時間をかける必要があることを言っているのだと思います。

私はそれに加え、"普通"のすごさも申しあげます。毎日決まった時間に店を開け、決まったメニューで、決まった味を提供する、この一見"普通"に見える商人こそ、実は裏では（その維持に）手間暇がかかっているわけです。

商売人だけではありません。主婦もOLもサラリーマンもみんな同様です。人にもよりますが、持病を抱える人も、片親も、容姿にコンプレックスをお持ちの方も、ありとあらゆる人の"普通"がありますが、その"普通"を維持するのに想像を絶するほどの労力と時間が費やされている人もきっといます。

繰り返しになりますが、"ナチュラルメイク"も"普通"も、全ての人に手間暇がかかっているとは言いません。しかし確実にある種の人たちは"それ"を維持するのに、相当な手間暇がかかっていることは認識しておいたほうが、人にやさしくでき、自分も幸せになれると思います。

そしてあなたも、人から見て"普通"と思われるようなことに、人一倍の手間暇（労力）がかかっていることがあれば、ぜひそれを大切にしてほしいと思います。誰からも認められず、誰からも気付かれなくとも自分だけは投げ出さず、自分を褒めることで"それ"との一体感を育み楽しむ、そんな生活があらば、私は心より応援します。

「簡単に見えるものほど、実は、丁寧に手間がかけられているのだな」

「だから自分もゆっくり焦らず進めよう」

「"普通"の人が一番すごい」

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。