「混合診療」とは?
私は保険会社に10年以上勤める会社員(39歳)で、FP1級技能士の資格も保有します(2019年に取得)。つきましては、社会保障は身近な知識のため、一般論はもちろんのこと、私見も交えながら本記事を記します。
ところであなたは「混合診療」という言葉を耳にされたことはありますか?
一般的に治療は公的医療保険が適用される「保険診療」と、保険が適用されない「保険外診療」に分かれます。(例えば歯の治療で銀歯をかぶせるなら保険診療、金歯なら保険外診療)。この公的医療保険を使った保険診療と、保険外診療を併用することを「混合診療」と呼びます。
そして現在の日本において原則「混合診療」は認められていません。
具体的にお話します。
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もしあなたが仮に "がん" になったとします(仮ですのでご容赦ください)。すると通常は病院で治療を受けると思います。しかし発見が遅かったこともあり、手術や放射線、抗がん剤等の一連の治療を受けたものの、回復の目途が立ちませんでした。
正直絶望に近い状態。
しかしそんなときに友人から "「温熱療法(温熱治療)」でがんが治った人がいる" と耳にします。さっそくあなたはそのクリニックに出向き先生に話を聞きます。すると話から可能性の兆しが見え、試してみる価値ありと判断します。
しかし残念ながら「温熱療法(温熱治療)」は保険外診療(自由診療)。全額自己負担です。それでも背に腹は代えられません。全額自己負担でも回復が期待できるなら試してみたいと意思は変わりません。
そして後日 実際に全額自己負担で受けられました。
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いかがでしょうか。私たちの身の回りで想定されそうなお話ではないでしょうか?しかしここで重大な注意点が隠されます。
(以後"自由診療"で統一します)
自由診療を受けると、それまで保険診療で受けた手術や放射線、抗がん剤等の一連の治療費は、さかのぼってすべて3割から10割、つまり全額自己負担となります。
ご存じでしたか?
これが「混合診療」が認められていないという意味です。ですから自由診療はある意味危険なのです。(実際にバレるかどうか、そして追徴されるかどうかは問題としません)
ではなぜ「混合診療」は認められないのでしょうか?
これには根深い問題が眠ります。日本医師会(開業医)、政府、保険会社など、それぞれの立場で賛否を取るからです。今後は解禁の余地はありますが、今は日本医師会が大反対し、政府はそれを呑む状態です。
ではなぜ日本医師会は反対するのか?
まず日本医師会は主に開業医の意見を代表します。それをもとに考えます。
混合診療が認められると今よりずっと多くの患者が(欧米で効果が認められたとされる)自由診療を求めるでしょう。その流れで体力のある総合病院はさまざまにチャレンジするでしょう。すると、最先端の高度医療や自由診療に管轄外、もしくは取り組む気のない(高齢の)開業医らは患者を奪われます。少なくともそう懸念します。つまりは開業医にとって競争原理を働かされては困るというわけです。それだけ日本医師会は公的医療保険に依存します。
政府の立場は微妙です。政府にとって混合診療が認められれば、自由診療が促進された分だけ医療費負担は浮きます。しかしこうも取れます。自由診療を試した結果、その自由診療が思った以上に粗悪で、逆に悪化、悪化した状態でまた保険診療のお世話になる顛末。これは逆に医療費負担が増加するように思います。
保険会社は混合診療に賛成でしょう。なぜなら自由診療にチャレンジするには、その分は全額自己負担になるため、その費用を普段から準備する必要が出ます。その準備を可能とするのが「保険」。よって保険会社は混合診療に賛成なはずです。(アメリカはすでにその状態です)
いかがでしょうか?
かなり私見も混じりましたが、「混合診療」についてご理解いただけましたか?
ただし「混合診療」は例外的に認められることも冒頭で申し上げました。"原則"としたのはそういう意味です。次回は例外的に認められる制度についてお話します。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。