「感謝」にいたる心得
(株)オオクシ(ヘアカットサロンを多店舗展開)の大串社長は、稲盛和夫さんが開設した盛和塾が始まって間もないころに入塾、直接指導を受けられる距離で経営や人生を学んでこられました。
盛和塾で学ばれたことは、何十、何百とあろうかと思いますが、その中で先代の経営を引き継いだ時に、不始末が発覚したときの心得を質問した塾生に、稲盛さんはこのように答えられたそうです。
「会社と継ぐということは、毒を食うということだ」
上記の言葉に大串社長は一切合切 酸いも甘いも受け継ぐ覚悟でなければ、2代目・3代目は務まらない、と解釈したそうです。
その後大串社長も数々の苦労と辛酸を舐めながら、経営努力を続け、売り上げや利益だけでなく、各種の賞を受賞するようになります。
当時の盛和塾で行われた先述の質疑応答に習い、大串社長は自身の体験を次のように振り返ります。
「覚悟を決めて一切を飲み込むと、人間は器が2倍にも3倍にも大きくなるものです。そして最後は "感謝" しか残りません。恨みつらみを持ったままあの世に行かなければならないかと考えると嫌ですが、自分がすべて背負うと心に決めると、一切合切 水に流すことができるからありがたいものです」
私は他の記事でも申し上げていますが、小手先のテクニックは大事だと思っていますし、テクニックを積み重ねることがキャリアとも思っています。しかしその根っこには、常に全体重をかけた切なる思い、切なるこだわりがなければ、嵐や風雨に襲われたとき 突破できないのではないでしょうか。
その根っこを培う大切さを、稲盛和夫さんや大串社長は繰り返し説いてくれます。(神渡良平著『オオクシ 未来への挑戦 「思い」の経営』ご参照)
私流に解すると、感謝に包まれるためには、どんな風雨にも負けない「覚悟」と何が起こっても人や環境のせいにしない「自分原因説」を持つこと。
この2つを腹に据えれば、転んでもタダでは起きない精神ができ、都度改善を図り工夫を凝らしチャレンジをします。そこにはエジソンよろしく "うまくいかなかった方法" を見つけられた喜びすら感じるかもしれません。
結果が出るまでこのサイクルを繰り返すわけですから、結果が出ないわけがありません。そして結果が出た "そのとき" ━ 今までの苦労がすべて感謝で洗い流されるのです。
「覚悟」と「自分原因説」
それが感謝にいたる心得です。
引用・参考文献