「自助・公助・共助」
先日紹介した佐藤優さん著「メンタルの教科書」に、「最大のセーフティネットは人とのつながり」という項があります。
佐藤さんの考える人生のセーフティネットは以下の3つです。
・自助
・公助
・共助
自助は仕事をして稼ぐこと、保険に入ること、また余剰資金を貯金したり投資に回したりすること、すなわち「お金」です。
公助は公的保障制度(社会保障制度)のこと。今回のコロナショックでは、アベノマスクや特別定額給付金(10万円)がそれにあたります。無論、失業保険や労災、医療保険や介護保険、国民年金や生活保護制度等もすべて含みます。
共助は人間関係です。もっとも身近な両親や家族を始め、友達、仲間、知人等がそれにあたります。
お察しかもしれませんが、佐藤さんはこれからを生きるのに、もっとも大事になるのが共助と言われます。
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「自助」「公助」「共助」のバランスが大事だということはすでに触れました。しかしこれからの社会を考えた時、「自助」に頼れる人の数は少なくなるでしょう。「公助」もまた少子高齢化で、今までのようにはいかなくなる。年金も、健康保険もどんどん条件が悪くなると考えられます。
すると「共助」の比重がこれからは高くなるはずです。共同体のつながり、仲間や友人とのつながりが、ますます大切になってくる。ですから先ほどの同窓会の集まりのように、旧友との親交の復活というのは非常に大きな意味を持ってきます。できれば単に飲んで再会を懐かしむだけでなく、お互いを助け合う共助の気持ちで付き合いを深めていくことが望まれます。
(中略)
個々がバラバラになるのではなく、もう一度つながる。それは自分たちの独自のストーリーを作ることでもあります。世の中から与えられたストーリーに乗っていると、私たちはバラバラで無力な個に堕ちてしまいます。これからの時代はそれを乗り越える別のストーリーを自分たちで作ることがポイントです。それによって再び私たちはつながることができる。つまり「束になる」ことができます。
私たちは「新しいストーリーを作って束になる」ことで、再び強い心を取り戻すことができるのだと思います。
(同書より抜粋)
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いかがでしょうか。
一番いいのは、「自助・公助・共助」をすべて兼ね備えること。しかし実際は難しいかもしれません。なぜなら「共助」を育むには少なからずお金も時間もかかるからです。例えば「自助」で余剰資金が生まれた場合、それを貯め込めば「自助」は育まれます。しかし友達や家族でワイワイしたときは、応分に「自助」に回せません。
どちらがいいとかではなく、人の価値観によって「自助」を優先するのか、「共助」を優先するのかは変わります。しかし先に両立は難しいと書きましたが、可能とする人はそれなりにいるはずで、「共助」を育むのにお金がかからない方法もたくさんあるでしょう。SNSでマメに連絡を取るとか、電話やZOOM、スカイプでもつながれます。
ところで私は過去の記事『お金の使い方「寄付」等』で、橘玲さん(作家)が提唱する幸福の3つの土台を紹介しました。
・金融資本(お金)
・人的資本(仕事)
・社会資本(愛情・友情)
3つに分けるという点では、佐藤さんの「自助・公助・共助」と似ています。橘さんは3つの資本でどれが一番大切か、という視点は語られませんが、当人の価値観に基づき各資本のバランスを最適化することを勧められます。そして橘さんも金融資本(お金)と社会資本(愛情・友情)を両立させることは難しいと説かれます。
佐藤さんの分類でいえば「自助」、橘さんの分類でいえば「金融資本」「人的資本」を優先する方は多いとは思いますが、その人たちの一部はもしかしたら次の物差しを見失っているかもしれません。
「幸せ(しあわせ)」「幸福感」
私たちは多かれ少なかれ、人目(ひとめ)を気にします。その人目(ひとめ)は目に見えるものを取り上げがちのため、目に見えにくい家族や友達とのつながりよりも、目に見えやすい仕事やお金を優先してしまう人も出てきます。
しかしあの世に持っていけるのは「目に見えない資本(思い出)」だけです。そして目に見えない資本(友情・愛情)は、目に見える資本(仕事・お金)を生み出す原動力、きっかけになったりもします。
私は会社員のため毎日会社勤めをしますが、職場の人間関係も「共助」「社会資本」という括りで認識します。人事は好き嫌いを含むと思いますし、仕事のパフォーマンスやストレスマネジメントにそれらは多分に影響します。つまりは「自助」と「共助」、「人的資本」と「社会資本」はつながっている意識をもっているということです。
どの資本も大切に違いありませんが、折に触れてバランスを顧みることは、後悔なき人生を象(かたど)ると思います。繰り返しになりますが、価値観に正しさはなく、好みや納得感の世界。「自助・公助・共助」のバランスがとれたポジションに幸せは存在します。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
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