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がん予防「糖質制限よりカロリー制限」

私は先日、こんな記事を書きました。

leonet0702.hatenablog.com

健康常識と言ってもいいくらい、有名な話を書いたつもりです。概要はタイトル通り、がん細胞は糖質をエサとして増殖するというもの。よって「がんの罹患、または悪化が心配な方は糖質の摂取に気をつけよう」という帰結でした。

 

しかしその説に待ったをかける記事が上がりました。がん細胞の増殖に糖質制限は関係なく、カロリー制限で可能になるという説です。まだマウスの実験が主のため、人間にも当てはまるかどうかは追加実験が必要ですが、当てはまる可能性は大いにあるとみられます。

 

糖質制限食を記事ではケトン食と呼んでおり、ケトン食とはケトン体回路(脂質回路)でエネルギーを生成する療法で、具体的には糖質を制限し、脂質やたんぱく質を中心にする食事法のことです。

 

それに対し、カロリーを制限する食事療法はその名の通り、カロリー制限食と呼んでいて、この両者を比較した実験はこれまでになく、またケトン食ががん細胞の増殖を抑えるというエビデンスもなかったとのこと。

 

アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)は、この両者のアプローチから、どちらががん細胞の増殖を抑えられるかにスポットを当てました。行われたのはマウスによる実験で、結果、がんの成長を最も阻んだのは脂質レベルの低下脂質バランスの崩壊であり、血糖値を抑えてもがんの成長阻止にはほとんど効果がなかったとのこと。研究内容の詳細は10月20日に「NATURE」に掲載されました。

 

実験内容は、カロリーを25%~50%抑えた「カロリー制限食」と、糖が少なく脂質とタンパク質が多い「ケトン食」との比較です。マウスを膵臓がんにし、両者の療法を取り入れることで腫瘍がどれくらい抑えられるかを比較したというもの。すると「ケトン食」の方はほとんど抑制効果がなく、一方「カロリー制限食」のほうは抑制効果が見られました。なぜか? 

 

それは糖質制限じたいに問題があるわけではなく、よく考えると、どちらも糖質制限がなされています。ということは、糖質ががん細胞の増殖を促進するという説はここでは問題になりません。その説は間違っているというわけではなく、それだけではがん細胞の成長(増殖)の抑制効果に乏しいという事実です。糖質制限は当たり前で、その上にもう一つ何かが起こらないと、がん細胞の成長(増殖)を抑えられないということです。もう一つの何かとは?

 

脂質は大きく飽和脂肪酸不飽和脂肪酸に分かれますが、その両者のバランスを崩すことがそれにあたります。飽和脂肪酸とは一般に固形で乳製品や肉などの動物性脂肪に多く含まれています(パルミチン酸、ステアリン酸など)。不飽和脂肪酸は、常温では液状で、植物油に多く含まれています。(オレイン酸リノール酸、α-リノレン酸など)。脂質から細胞膜をつくるには、両者の割合が適度に必要ということはここで抑えておいてください。

 

さて、ここからです。飽和脂肪酸不飽和脂肪酸のバランスを維持するのにSCD(ステアロイルCoAデサチュラーゼ)と呼ばれる飽和脂肪酸から不飽和脂肪酸を作る酵素が必要になります。「ケトン食」も「カロリー制限食」も、どちらもこのSCDを不活化させることが実験で明らかになり、不活化そのものが原因でないことがわかりました。

 

次に両者のバランスに着目し、「ケトン食」のマウスに飽和脂肪酸を多く摂取させました。すると「カロリー制限食」と同様に、がん細胞の成長が遅れることが確認され、脂質の2種類のバランスが壊れたときに、がん細胞の成長は阻まれることがわかりました。

 

がん細胞も正常な細胞とベースは同じです。正常な細胞が活性酸素等で傷つけられ、その結果、がん細胞に変異してしまうのです。変異する過程でも、正常な細胞と同様に、脂質から細胞膜を成長させなければなりません。その細胞膜の成長に飽和脂肪酸不飽和脂肪酸の適度なバランスが必要で、そのバランスが崩れたがために、がん細胞は細胞膜を成長させられず、成長を阻まれたということです。

 

もう一度整理しましょう。

 

「カロリー制限食」も「ケトン食」も、どちらもSCDを不活化させました。しかし「ケトン食」には効果があまり見られませんでした。「ケトン食」は糖質制限食を行う食事法で、脂質の制限はありません。よって脂質は摂取します。ということは、SCDが不活化しても、食べ物から脂質が得られるため、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸はバランスよく摂取できる可能性を帯びます。実際にバランスがとれたとしましょう。するとがん細胞を成長させる細胞膜の生成を可能とします。

 

そこで「ケトン食」に飽和脂肪酸を優位にするよう摂取を試みたところ、「カロリー制限食」と同様に、がん細胞の成長を遅らせることができ、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸のバランスを崩すことがポイントだったことがわかりました。しかしそれだけではありません。

 

脂質から細胞が成長する細胞膜を生産するため、そもそも脂質がなければ話になりません。そこで脂質不足そのものも、がん細胞の成長を阻むということもわかりました。「カロリー制限食」の凄いところは、この両者(脂質不足と脂質の2種類のバランスの崩壊)を同時に遂行できたことです。つまりがん予防やがん治療に最適な食事法は、この両者が同時に達成できる「カロリー制限食」ということになります。

 

しかし私たちの日常で、ダイエットを志している人以外、「カロリー制限食」は好かれません。私もどれだけがん予防になるからといっても、カロリーを気にして食事をしたくありません。それをわかってか、研究チームは今後、どのような食事法が飽和脂肪酸不飽和脂肪酸のバランスを崩すのかの最適解を求める調査をされていくとのこと。それならば、ぜひ期待したいところです。

 

がん予防「糖質制限よりカロリー制限」

 

あなたはいかがお感じになりますか?

 

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

引用・参考記事

nazology.net