不動産投資「繰上返済」
私はこまめに不動産投資の本を読んでいます。今年の2020年から中古ワンルームに絞り、不動産投資を開始しました。現在は2戸を所有。3戸目を探していましたが、今年の年収が想定より低かったため、希望している貸付金利は得られないと判断し、少し様子を見ようと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大により、不動産投資市場も少し様子が変わってきたかと思い、最近に発売になった本を中心に読んでいました。しかし正直あまり変わっていないというのが読後の感想です。しかし別の側面で、あいかわらず「繰上返済」を勧める著者が多いことに気づき、本日は「繰上返済」について私の考えを述べます。
結論、私は「繰上返済をしなくてもいい」という考えです。
不動産投資の本を書いている著者は、当たり前ですが、ほとんどの方が不動産投資家です。よって不動産投資に絞っていろいろなことを書かれており、「繰上返済」も同様の扱いです。
現金一括で購入すれば、銀行から融資を受けずに購入できます。しかしそんな人は少数でしょう。大方は銀行から融資を受けて購入します。本記事は後者のポジションで話を進めます。
銀行から融資を受けるということは、簡単に言えば借金を抱えるわけです。その借金がイヤで、賞与や毎月の余剰資金から、なんとかせっせと繰上返済をしようと考えるひとも多いと思います。そして本を出されている著者の多くも、そのスタイルを勧めます。
「繰上返済」を勧める言い分は、借金のし過ぎで手が回らなくなり、自己破産に追い込まれる人が多いことにあります。どういうことかと言うと、借金を返済するのはオーナー(投資家)ではなく入居者だからです。つまりは家賃の下落や空室がつづき、オーナー自身が手持ちで返済しなくてはならなくなり、その返済が労働収入では追いつかなくなり、自己破産に至るという図式です。
しかし借金が少ないか、なくなってしまえば、オーナーの持ち出しも少なくなり、なんとか持ちこたえることができたり、V字回復も可能になるため、繰上返済はした方がいい、ということになります。お説ごもっともです。
そのような観点では、借金は借金ですから、早く完済するにこしたことはありません。よって「繰上返済」は何も間違っておらず、逆に賢明と言われる行為です。
不動産投資は、よくこんなことが言われます。
「不動産投資に答えはなく、出口戦略で戦法が異なる」と。
「繰上返済」もまさにそれで、一日でも早く完済物件化し、家賃収入をまるまる自分の懐に入れたいという「出口」を持たれる方は、可能な限りで「繰上返済」をされることが「出口」に近づくことになるでしょう。
完済物件を持つと、その物件からの家賃収入は別の借入物件の返済に回せます。そのように可能な限りで借入物件を持ち、その中で一つ一つ完済物件化を達成すれば、さらにまた借入物件を購入できることになり、物件そのものの数を増やすことができます。これが「資産の拡大」と言われるものです。
著者の多くは、そのような「資産の拡大」を勧められ、ゆくゆくは家賃収入だけで生活できる不労所得生活を夢見させます。確かにそのような形は理想かもしれません。
昨年の私は実はそのような「出口戦略」を構想に描いていました。しかし今の私は違います。先述の「繰上返済」を可能な限りで行い、完済物件をつくり、それを楯に新たな物件を融資を受けて購入する、そんな資産拡大の図式は、不動産投資だけで投資を考えた場合になります。
私は投資信託という金融資産も持つ者で、投資を不動産投資だけで考えることは、投資家という括りで言えば、少し違うな・・という考えをもちます。前回の記事「ヒルトンホテル創業者の至言」で"抽象度を高くする"ことが人生戦略を考えるうえで、人を幸せにするのではないかというお話しをしました。
投資においても実物(現物)資産だけでなく、金融資産と組み合わせることが抽象度を高くした投資家目線だと思っています。そうすることで投資においてもフレキシブルな対応が可能となり、つまりはチャンスを逃さない視点が可能となり、長期的に見た総資産のトータルパフォーマンスを最大化できるように思います。
具体的な話をします。
まず不動産投資においての主要なリスクは次の2点です。
・空室(家賃の下落)
・銀行から受けている借入金利の上昇
先ほど銀行から受けた借入資金を返済できずに自己破産に陥るケースを挙げましたが、この2点が引き金となって起こることに相違ありません。
念のため申し上げますと、銀行からの借入金利は通常、変動金利で契約します。私も2戸の物件とも変動金利で借りています。よって金利が上昇すれば、今までの返済額が上昇することになり、負担増は避けられません。
先の2点のリスクは、いずれも「それまでは負担しなくてよかった金額が、負担を余儀なくされる」という状態を指し、そのことを想定せずに日々の生活を送ることは、不動産投資をするうえで、勉強不足と言われても仕方がありません。
私は先の2点のリスクは、いずれも金融資産で賄えばいいと考えています。まず「空室」ですが、これはそもそも空室にならない物件を極力選ばないといけないという前提はありますが、それでも空室になってしまった場合、(または家賃が下落した場合、)、金融資産を取り崩し、それを繰上返済に回すことで、今まで通りのキャッシュフローに調整するか、もしくは毎月を家賃の下落分だけ金融資産から持ち出すかのどちらかです。
次の「金利上昇」ですが、これもまた同様で、金融資産を取り崩し、繰上返済に回すことで、今まで通りのキャッシュフローに調整するか、金利上昇分だけの返済額の上昇額を金融資産から持ち出すかのどちらかです。
私の申している「金融資産」は現金(預貯金)も含みます。
次に不動産投資だけを考えた場合の「繰上返済一辺倒」におけるリスクを考えてみます。
それは先述の裏返しです。つまりは金融資産がなくなるため、(もしくは少額になるため、)空室や家賃下落の際の持ち出し分を賄えなくなること。そして金利上昇分の上昇額を賄えなくなること。そういうことでしょう。
完済物件をつくって終わりにする人は、ここでは特に問題になりません。つまり先の「資産拡大」を狙わずに、借入物件を最低限しか所有しない人は、空室や金利上昇が起こっても現金を確保できていると思いますので、ここでは問題になりません。問題なのは不労所得生活を夢見て、めいっぱい借入物件を所持し、それでいて現金ができればすぐに繰上返済をする人たちです。
そしてもう一つ大事な点が、「金融資産」の拡大が視野にないことです。例えばユニクロの株価が何かの不祥事で下がったとします。しかしその不祥事は一時的なものですぐに株価は回復する見込みがあったとします。そのようなときにも、手元に現金がなければ投資ができません。
その(ユニクロへの)投資は、繰上返済よりもリターンが高かったとしても、現金がなければ機会損失を免れません。もっと言えば、そもそも視野や概念すらないという感じです。
最近はゴールド(金)の価格は戻り始めていますが、数日前までは連日下がっており、あきらかにゴールド(金)への投資機会となっていました。私もその機を逃すまいと少額ですが、投資をし、すぐさま上昇し始めたため、少額ではありますがリターンが得られています。
今年のコロナショックにおいても、株価は軒並み下がったため、金融投資家としてはこの上ない投資機会となりました。もちろん私も数十万円を投資し、案の定 株価は回復し、それなりのリターンを得られています。
簡単に申せば、(借入物件への)繰上返済のリターンと金融投資のリターンを天秤に乗せ、リターンの高い方を選べれば、それが得策ということです。そのためには、まずもって「金融資産」への着目と、いつでも投資できるだけの「現金」の保持という2点を抑えることが必要です。無論、株価が下がり始めたときに売却し、株価が戻り始めたときに購入する機動的な手法も持ち合わせられれば、なおリターンは優れることとなります。
そして繰り返しになりますが、「資産拡大」を狙い、とにかく「繰上返済」に目がくらむ人は、おそらく借入物件も可能な限りで所有しているはずなので、空室や金利上昇の局面において、いっきに化けの皮が剥がれ、持ち出しのキャパオーバーが襲いかかります。本当にその点はご注意いただきたいと思います。
最後にインフレについて付させていただきます。
借金はインフレにとても有効です。なぜならインフレになっても借金額はインフレ上昇分がかさましされるわけではなく、一定で変わらないからです。まことしやかにささやかれていることに、国は1000兆円という多額の借金(国債発行額)をさらに増やしている現在、インフレによって実質の負担額を減らそうとしているのでは?という論があります。
不動産投資においても、インフレが起これば、インフレ上昇分だけ家賃も上昇させられると言われるため、もしそれが本当なら、家賃の上昇分だけ借金の返済額も上昇させられ、結果、返済が早められることになります。
そこで金融投資ももっていれば、もちろん金融資産もインフレに対応されると言われるため、インフレ上昇分だけ、金融資産も上昇するわけで、不動産価格(実物資産)・金融資産、ともにインフレに対応できる形になります。
ここでは不動産投資のみの繰上返済一辺倒の人も、インフレの恩恵を享受できるわけなので、両者の差はないと考えます。
不動産投資における「繰上返済」
私の答えは『出口戦略によって「繰上返済」の要否は変わるため、まずもって出口を明確にすること』ということになります。そして私は自分の資産を不動産(実物資産)だけに偏らせたくないため、繰上返済できる資金があれば、それは金融投資に回し、金融資産で運用するポジションをとります。そして空室や金利の上昇が起こったときなど、必要に迫られた場合に限り、繰上返済を検討することになると思います。
あなたはいかがお考えになりますか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。