「凡事徹底」は能力開発法
私は20代のころ(現在39歳)、こんな本を読みました。
椋木修三さん著『超「高速」能力開発』
本当に素晴らしい本で、当時自分をモチベートするのにとても役に立ちました。その中に今でも忘れられないお話が載っており、前回の記事「ルーティーンと心の強化」に類似する内容のため、本記事で紹介します。
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私は大学浪人中の初冬、恋愛に揺れる心を静めるために、毎日四時頃、下宿近くの小学校の校庭で、禅を組んでいたことがあります。
静かに座禅をしていると、遠くでシャーシャーという掃除をしているような音がします。「まさか、こんな朝早くから掃除をしている人がいるはずはないが?」と疑問に思いながら座禅を終え、下宿に帰ろうとすると、小学校の前の道を掃除している女性に出会いました。
「やっぱり掃除の音だったんだ」と私が驚いて立っていると、女性は私に話しかけてきました。
「お兄ちゃん。私はね、こうしてても動く、足も動く、目も耳もきける。これほどありがたいことはないと思っているの。だから、何か人様の役に立つことをしないと申し訳ないと思うのよ。それでこうして毎日子供たちの通学路を掃除しているの」
「すばらしいですね」
「他人から"変わった人"とか見られても全然気にならないの」
「でも雨の日なんかは?」
「雨の日も風の日も毎日掃除します。私はね、怠け者なのよ。一日でも休むともう嫌になってやめるから、休まないことにしているの」
以来、毎朝、その女性と立ち話をするようになったのですが、ある日彼女がこんなことを言いました。
「お兄ちゃん。信念を作る方法を知ってる?」
「う~ん、ちょっとわかんないです」
「同じ時間に、同じ場所で、同じことをすることなのよ。だから、私もこうして毎日、同じ時間に、同じ場所で、毎日掃除をしているのよ」
「そうかぁ、なるほど」
それから私は彼女の受け売りで「同じ時間に、同じ場所で、同じことをする」という言葉を何かにつけ使うようになりました。
人から見ればアホみたいなことでも、簡単なことでもよいのです。同じ時間に、同じ場所で、同じことをやることが能力アップには大切なのです。このことを「凡事徹底」と言い換えてもいいでしょう。「凡事徹底」は、無能を有能に変えていく一つの強力な方法だといえます。
私が能力開発教室でこの話をしたら、さっそく実行した人がいました。その人はAさんという高校の若い英語教師でした。ヒヤリング力が弱く、ネイティブが普通のスピード話したら聞き取りにくいというのです。
Aさんは私の話を聞いてヒヤリング力増強のために「同じ場所で、同じことをする」一大決心をしました。帰宅したら、着替えも食事も風呂も後回しにして、即、自分の部屋(同じ場所)に入り、買いだめしていた英語教材テープを30分だけ聞く(同じことをする)ことに決めたのでした。帰宅時間が一定しないために「同じ時間に」だけは省きましたが、この凡事を毎日続けたのです。
まもなくその効果を試す機会がきました。Aさんの学校が外国人講師を招くことになり、その通訳を命じられたのです。ほかのベテラン英語教師たちが尻込みして若いAさんに通訳を押し付けたというのが実情だったようですが・・。
自分でもビックリするくらいヒヤリング力が伸びていて、何の苦労もなく通訳でき、大いに面目が立ったということでした。Aさんが「凡事徹底」を始めた当初は、聞き取れない単語がたくさんあったといいます。しかしそんなことはかまわず、とにかく30分だけヒヤリングをするということを続けると、少しずつ、少しずつ、聞き取れなかった単語が聞き取れるようになっていったといいます。
そうです。凡事徹底で大切なことは、むずかしいことをしないということです。すぐできること、簡単にできることを徹底して続けるのがコツです。
さらに重要なことは、続けること自体が「有能の証(あかし)である」と気づくことです。有能とは、特別な才能を持っていることでは必ずしもありません。「誰でもできるような簡単なことを続ける」のは、実は誰でもできることではないのです。凡事徹底するだけでも、十分すぎるほど有能であることに気づいてください。
椋木修三さん著「超「高速」能力開発」より抜粋
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いかがでしたでしょうか?
とても勇気のもらえる話ではないでしょうか?
最後に私から1点捕捉させていただきます。よく勝間和代さん(経済評論家)が言われることですが、「努力=環境整備」ということです。
毎回面倒なことを、気合を入れてなんとかやり遂げられることは努力かもしれないが、そんな努力は続かないという考えです。努力は継続してなんぼという観点から、いかに継続できるかが勝負の分かれ目で、そのためにいかに環境整備に磨きをかけられるかが大事ということです。
例えばダイエットを例に出すと、自宅に誘惑物(例えばお菓子とか)を一切置かないとか、そもそもスーパーやコンビニに行かないとか、行く頻度を制限する…とかです。
勝間さんの考えはとてもわかりやすく、一言で言えば "意識は「感情」に勝てない" ということ。感情は誘惑、「朱に交われば赤くなる」ということです。いかに「朱」に交わらせないか、いかに”なりたい自分"を「朱」とできるかが大事になります。
インターネットビジネスの物販を学びたいなら、物販のセミナーやスクールに入ってしまうこと、同じ目的の仲間を作ること、こういうことが環境整備です。周りが意識低い中、自分一人だけが意識を高く保つのは素晴らしいことかもしれないが、ナンセンスということです。
私は勝間さんの考えにとても同調します。実際に人間を「性弱説」にとらえ、環境の力をうまく使っている人の方が効率がいいのはあきらかです。難関大学に合格したいのに、(家庭的な経済状態は問題ないとして)その大学における驚異の合格率を誇る予備校の力を借りないのは、意固地というものでしょう。本当に合格をしたいなら、予備校や塾の力を借りるのは、テクニック面だけでなくメンタル面からも推奨されることで、それが「素直」であり「本気」というものです。
人は持ちつ持たれつです。誰かの手を借りることや、環境の手を借りることは、借りられる側も嬉しいものです。そのようにしてモチベーションや絆も育まれ、物心ともにバランスが取れていくのだと思います。(バーンアウトを回避できるということ)
ということで、「同じ時間に、同じ場所で、同じことをする」「凡事徹底」は、無能を有能にする能力開発の一法であり、それを助けてくれる秘訣は「環境整備」にある、そんなお話をお届けしました。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
引用・参考文献