「見える化」の効用
コーネル大学のブライアン・ワンシンクが行った実験では、あるスーパーボウルの試合でチキンウィングを食べる際、一方(31名)はおかわりするたびに、食べ終わった骨を片づけなければならず、もう一方(21名)は骨を積み上げたままでOKなルールが課せられました。それぞれ別の部屋での話です。
実験結果は前者が後者より、27.3%多く食べたそうです。このことから、骨を積み上げた後者は、"もうこれだけ食べたんだからよしとするか"という心境が生まれ、前者は何も見えないわけなので、ついつい食べ続けてしまったというわけです。
コロナ禍で外食がめっきり減りましたが、居酒屋でもどこでも、通常は新規注文が運ばれれば、空いたお皿は店員が持って行ってくれます。これもついつい食べ過ぎに繋がっているのかもしれません。
先の実験をある心理学者はこうまとめます。
「人間はお腹がいっぱいになったから食べるのをやめるのではありません。自分が食べたと感じる量によって、食べるのをやめるのであって、食べた量がわからないときには、限界まで食べてしまうのです」
本当にその通りだと思います。
食べ過ぎを抑制するテクニックとして「見える化」は有効と言えますが、それだけではありません。すべてのことに「見える化」は有効です。予定のタスクや、処理済のタスクも、見える化がやる気や満足を高めてくれます。
受験漫画「ドラゴン桜」では、偏差値が伸び悩んだとき、「これまでやった勉強日記を辿れ」というシーンがあります。落ち込んだときや悩んだときは、これまで頑張った自分を思い出し、そんな自分を無駄にしたくないという熱い情熱を呼ぼ起こせというのです。そんなときの材料も「見える化」があってこそでしょう。空想や回想では臨場感に欠けます。
私はやっていませんが、「ライフログ」という言葉もあります。日常の様々なことをログとして残しておくことで、何かあったときのメモとして、生きた証として、有効に機能するという考えです。日記や記録と言い換えてもいいですが、「残す」というのは"けじめ"という機能もあり、残すだけで"もう振り返らなくていい"という安心感が生まれます。これらもすべて「見える化」の業です。
最後に「集中力」について。
確か陰山英男さんの著書だったと思いますが、学生がどのようなときに集中力を発揮するかを調べたところ、「書く」行為のときだったそうです。確かに私も「書く」ときや「入力(タイピング)」のときに集中力が増している気がします。これは「手を動かす」ことと「脳の活性」がリンクすることが原因と言われますが、それだけでしょうか? もしかしたら「見える化」も原因の一つかもしれません。「見える化」については誰も語っていませんが、私はイメージや想像だけでは弱く、文字や図、絵にして思考が動き出すと思います。これもただ「見る」だけでなく、手や足など身体を動かしながら、「見る」ことがさらに集中力を高めてくれると思います。
「集中力」と「見える化」については、私の体感のみの感覚ですが、冒頭の実験は、一つの実験結果として、参考の価値はあると思います。テレビや動画を観ながら食べると食べ過ぎてしまうのも、同様の作用からくるものでしょう。
「見える化」の効用
達成感や満足、センチメンタルバリューだけでなく、悪習慣の抑制にも「見える化」は有効に働きます。
あなたはいかがお感じになりますか?
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。